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「お嬢さん、今日はほうれん草がええよ!茹でて良し、炒めて良し、身体にも良しやで」
大きなだみ声でお客さんを捌くのは、店主山本二郎55歳、絶賛嫁さん募集中だ。
店の奥には、最近少しパワーダウンした母フミエが椅子に座っている。
八百屋『おサルのお尻はまっかっか』は、野菜と全く関係ない店名だが、覚えやすいと高齢者には評判だ。
たまに『おサルの籠屋』とか、『おサルのモン吉』とか呼ばれるがそれもオッケー。
二郎は小さな事は気にしない、オールオッケーO型なのだ。
人気の秘密は関西愛も地産地消愛も強い二郎、店頭に並べる地元至高主義の野菜達は、どこの八百屋にも負けない自信がある。
けれど世知辛い世の中は、それだけで人気店にはしてくれない。
では、お約束のイケメンだから?
「二郎さんがイケメン?冗談も鼻から牛乳にしてや~。イケメンちゃうちゃう」
「イケメンて!笑うわ、むしろイカ天やろ!」
地域住民から深く愛されているようだ。
「まぁな……口は上手いよな、二郎さん」
「そやな、満更でもないかなぁ~」
イケメンではないが、二郎には『関西マダム達の年齢を瞬時に見破る』という、女性の敵とも取られかねないスキルがある。
二郎はこのスキルを活かし、数多の女性客を魅了し、野菜購買へと誘って行くのだ。
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