12人が本棚に入れています
本棚に追加
高橋夏美
運送会社の事務員としてもう勤続28年。
皆勤賞18回、社長賞7回の記録はまだ誰にも破られていない。
──真面目かっ!いや……お局やん。
毎年初々しい新人が入り、社長や男性社員にチヤホヤされまくり、トラックドライバーのおっさん達にまで可愛がられても、お局は動揺しない。
若くてかわいい特権を活かし、片付いてもいない仕事をほっぽり出して定時に帰り支度する新人。
残された仕事を黙々とやる高橋夏美は、今年で50歳になった。
皆勤賞も社長賞も勤続年数も、今のところ自分の人生に何も役立っていない。
欲しいのはスカスカの名誉ではない。
この滲み出て溢れ出し、激流になっている結婚願望を満たしてくれる誰かだ。
定時にさっさと帰る小娘などにかまっていられない。
どうせ彼女達は、後3〜4年もすれば寿退社するのだから。
──高橋さん、25回も寿退社を見送って〜花束渡してさ、これも記録更新中やんな!ププッ。
裏記録として囁かれているのも、夏美は重々承知している。
今年こそ花束を渡される側に、私はなる!
「何年目だ?この誓いも……」
40歳くらいまでは必死に婚活した。
親戚の仲介でお見合いも腐るほどした。
成功しない、噛み合わない、上手くいかない。
腐るのは気持ちばかりだ。
連敗記録を更新すればするほど、気持ちが萎えてくる。
最近ではかなり投げやり気味だ。
最初のコメントを投稿しよう!