高橋夏美

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「もうそろそろ諦めなアカンやんな……」 高校時代の友人達と、煤けた焼き鳥屋で愚痴を溢す。 これも毎度のことだ。 「独身貴族最高やん!羨ましいわ」 「そうそう、夏美はキャリアもあるしな。今更旦那なんかうっとーしーだけやで?」 「クールに生きて、自由を満喫したらいいねん」 運ばれた瞬間に、次々と焼鳥を頬張る友人達は、串で夏美を指しながらそんな事を宣う。 彼女達は全員既婚者で、夏美からすれば羨ましいの一言だ。 ──これが既婚者の余裕かぁ……なんかムカつくけど。 気心の知れた友人達と食べて飲んで騒いでも、若い時のように心が晴れない。 むしろ、次の日がツライ。 結婚をスッパリ諦めると、自分はどうなるんだろうか。 仕事に邁進するほど、仕事人間ではない。 ほぼ無趣味だ。 かろうじて、お嫁に行った時に困らないようにと通った料理教室のお陰で、料理は好きだ。 ──これも、古き悪習やんな?今どきは旦那も料理するらしいし。 「何やってんだか。アホらし!」 結婚を諦めるのは、自分が女でなくなる気がして怖かった。 反対に、肩の荷が降りるようなスッキリとした気持ちで生きていける、そんな期待もあった。 「奥さんって、一回呼ばれたかったな」 ──僕の奥さんです。 「キャー!なんか想像だけでドキドキしてまうぅ~」 夏美の可愛らしい夢だった。
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