高橋夏美

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途中コンビニに寄り、ブルーのカゴにお酒を次々放り込んでいく。 ビール、酎ハイ、ハイボール。 炙ったイカでも齧りたい気分だが、チーかまとさきいかで我慢する。 レジの店員にはギョッとされたかもしれないが、知ったことかと開き直る。 明日は週末、しこたま呑んでも差し支えなどない。 商店街を歩いていると、いつもはほとんどの店が閉まっているのに、今日は夕飯の買い物客で賑わっていた。 「そっか……まだ、6時くらいやもんな」 金髪の若いママさんが、グズる子供を叱りながら通り過ぎて行く。 「ハッピーセット?ハッピーセットなんか食べてもハッピーになられへんねん!」 「でも、ハッピーセットがいいもん……」 ──あんなに叱って……僕ちゃんはきっと、それを食べたらハッピーになれるんやろうに。世知辛い世の中やな……。 泣きべそをかいている子供が切なくて、立ち止まってその小さな背中を見送る。 「叱られても、繋いだ手は離さへんのやな?」 コンビニ袋が、カサカサと音を立てた。 あと少しで商店街を抜ける。 「お嬢さん、いつもありがとうな?おまけしといたで〜」 特徴的なだみ声と、おばさん達の笑い声が聞こえてきた。 夏美もたまに買い物する、派手な看板の八百屋だ。 「はぁ〜、相変わらずチャラいおっさんやな……お嬢さんて。どう見てもおばさん丸出しやんか」
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