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月は雲の奥にひっそりとその身を潜め、光といえば、それだけでイルミネーションじみた、無数の建物の灯かりだけだ。
「ああ、――――――」
――――綺麗な夜。
月明りの届かないツクリモノの光に支配された世界は、こんなにも昏い。
そう。
夜は暗くて然るべきだ。
故に、こういう夜こそが、ここではホンモノとなる。
「…………行くか」
机に置いてあったモノを懐に忍ばせる。
全く……。
最近日増しに『衝動』の猛りが酷くなる。
少しサボるだけですぐ頭の中がケモノの咆哮じみた声で埋め尽くされる。
満たされる事の無い欲求。
性欲に似たそれは、その実、正反対の行為に他ならない。
「――――――――」
麻薬以上の依存性の酷さに自分の事ながら呆れる。
自虐的な溜息をつき、鏡に向かい、――――――
――――ここまでは普通だった。
そしてここからが、オレにとって初めての異常体験――――
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