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楽しい土曜の夜は俊とデート…じゃなくて、作戦決行の日。
今回の仕事はどうにも簡単でつまらなそうだ。とは思うものの、結婚詐欺にあって大金取られた上に、俺らに依頼して更に大金払って復讐したいっつうんだから余程恨んでるんだろうなぁ。
そんな依頼人様達の恨みをね、哀しみを、復讐で少しでも和らげる事が俺らのお仕事です。
さてさてターゲットXはいつも新しいカモを探す時に行くbarがあるそうだ。ありがち。
会員制、VIPルームあり。多少の小金持ちじゃないと入れない所だ。こりゃ、従業員にも仲間がいる感じだぁね。
俺と俊、それから崇は、依頼人から入金された前金の中からそこのbarに多めの金を払って会員になり入店できるようにしてある。
一応ね、昨日俊と下見で来店してみたんだ。端の方のテーブル席で一杯だけ飲んで帰った。俊は下戸であんま酒好きじゃないしね、俺は酒好きだけど余計な金使いたくないの。デートじゃなくて下見だから一杯で十分。
しっかしなぁ、結局崇の分も金払って会員にしてしてやってる辺り、俺らだけじゃなく裕司さんも崇に甘いんだよな。
さて、そろそろ決行といきますか。
「こちら亮二。裕司さん聞こえる?」
「あぁ」
う~ん、いつもながら短い返事。こっちは潜入前で多少緊張してるんだから少しくらい軽口たたいて緊張和らげてくれないもんかね。いいけど。そんな人だから信用してるけど。
「じゃ、そろそろ潜入するよん。あっ、その前に俊、ターゲットに触られたらヤダからいつものおまじないしといて」
「ん。おいで、キスとかさせちゃダメだよ」
「うん、当たり前じゃん。念の為だよ」
顔中に軽くキスしてもらって、唇には念入りに。潜入前とか、ターゲットと接触する前とか、俊以外の人が俺に深く触りませんようにっておまじない。可愛らしいだろ。自分で言い出した事だけど、今まで効果あるんだからおまじないってのも馬鹿にしたもんじゃないなと思ってる。
「ん~っ、俊、もっと…」
「…お前らなぁ、無線越しに俺も聞こえてるし、崇も少し遅れるにしろ来るんじゃねえの?盛るのは終わってからにしろよ」
「分かってますって。…うわっ、わんこ!」
俺たちのちょうど間。デカイ崇がちんまり座ってこちらを見上げていた。
「おまじないの前辺りから後学の為に見てました。店近くの物陰にいるだろうって思って探したんで」
「後学ってお前…まぁ、いいや。俺が先に行くから、10分くらいしたら2人で普通の客装って入ってきなよ。お先~」
「はい行ってらっしゃーーい。……相変わらず亮二さんて切り替え早いですね」
「そんなとこもいいだろ。惚れんなよ?」
「まさか。あんたら二人とも好きですからね。手出しはしませんよ。それに俺は…」
「何?」
「ここからは内緒です」
ふぅん…。見当ついてるけどね。
亮ちゃんが入店してからまだ1分。姿が見えなくなると恋しくなる。
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