case1 結婚詐欺師

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 いざ出陣、というか入店。  クラシックだかジャズだか知らんお洒落な曲が流れている店内は控えめな照明で薄暗い。会員制の良さげな店だけあって従業員の教育も行き届いてる。  控えめ且つしっかりした挨拶。落ち着いた店内に合ってるよ。ボーイが席に案内してくれようとしたけれど、こちらは目的があるので片手をあげて断る。すぐに意図を汲み取ってくれるのもいい。  今度またゆっくり俊と来たいような気もするけれど、今から暴れる俺たちは入店禁止になる予定だから今度はない。残念でした。  まぁ俺と俊なら気を使わなくてもいい居酒屋のが向いてるね。  そっちのが子供舌の俊が食べたい物も揃ってる。なにしろこの店入る為に、スーツ新調しちゃいましたからね。しばし高いお店は入れません。節約の日々。これまた亮ちゃん残念でしょう。  でもね、見てこれ。スリムな俺の体型に合わせたスーツ。お尻のラインも綺麗に出る所がポイント。ターゲットも俺のキレイなラインに釘付けだぜ!バイのターゲットなんて軽くゲットしてみせるよ。  っと、しかしこんないい店なのに結婚詐欺の協力者なんているもんなんだなぁ、勿体無い。  良い店だろうと、頭の良い学校だろうと、どこにでもそういう輩はいるもんだね。  おぉっと、早速発見しましたよ。亮ちゃんナイス!俺ってついてるね。自画自賛。なんちゃって、そこまで広い店内じゃないあるよとセルフツッコミ。  おあつらえ向きにカウンター席に1人で座るXさん。名字は確か長谷川だったよな。  そっかそっか、新しいカモ探してんだもんな、1人に決まってる。目付きもギラギラしてて、これでよく掴まえられるもんだな。早速声かけてみよ。 「今晩は、お兄さん。お隣いいですか?待ち合わせなら向こう行くので遠慮なく断ってください」  ニッコリと得意の糸目の笑顔で警戒心を持たれないように話しかける。場馴れしてないような頼りなさげな雰囲気も忘れずに。 「お兄さんじゃなく、おじさんだけど良いですか?」  標的見つける前に俺が来ちゃって拍子抜けしたかな。それとも暇潰ししてやろうって感じ?  品定めしてるような全身にまとわりつく視線が微妙に気持ちわりーーー。まぁいいや、強引かもしれないけど隣座ったろ。 「お1人で飲んでらっしゃるんですか?ぼく、お邪魔でしょうか?」 「1人なので大丈夫ですよ。誰かと話したいなと思ってたところですし。それにこんな可愛いらしい方と飲めるなんて嬉しいくらいだ。あっ、男の子に可愛いらしいとか失礼だったかな」 「ふふっ、よく言われます」 「参ったな、自覚してるのか。今日は楽しく飲めそうだ」 「彼女さんとかいないんですか?あっ、ソルティドッグ下さい」 「あぁ、いたらね、隣断ってるよ。今はフリー」 「ふ~ん、ハンサムなのにね。ありがとう、頂きます」    ウェイターが持ってきてくれたソルティードッグに口をつける。あんまり酒豪に見せるのも良くないだろうからチビチビね。お酒覚えたてですみたいな。可愛いでしょ。ん~、美味しい。一杯めは一気に飲みたいところだけどね、我慢我慢。 「それで、隣に座ってくれたからには僕みたいなおじさんがタイプだ。って思ってもいいんですか?」 「ふふっ、それはどうでしょうね?」 「可愛らしい上に頭も良さそうな方だ。惹かれるなぁ」  気持ち悪い長谷川さん?の視線に耐えながら、入店者を告げる音が聞こえて入り口を横目で見る。店内に入ってきた俊と崇が見えた。  近くのテーブル席に座る二人。  これは、短期決戦仕掛けても良さそうだ。
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