case1 結婚詐欺師

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 一見和やか、実は腹の探りあいな気持ちの悪い会話は続く。  長谷川は俺を酔わせたいようで、しきりに酒を勧め、グラスが空かないうちに次の酒を注文する。  注文をとるのはいつも同じバーテン、て事はあいつが長谷川の仲間っぽいかな。  多分カクテルの酒の量増やしてアルコール度数あげて早々に酔わせようって魂胆だろうけど、こっちはこの見かけと違って酒豪なんだよね、おじさん。残念でした。そこまで我を忘れるほど酔っ払ったことないんだよね。  多分金持ちの女だって、目星がついたら薬も入れられてんじゃねぇかな。まずは既成事実作っちまえ的に。  女性って大変だなぁ。  新しく目の前にきた酒はドライ・ジンのショット。アホか。俺と飲み比べしてんのかよ。多分計りかねてんだろうなぁ。  良さそうなスーツは着てるものの、若いからもしかしたらホスト系かもってか。  とりあえず酔わせてヤっちまって身分証でも探す魂胆? 「で、お兄さん正直モテるでしょ?女からも…男からもかな?」 「そうですね。……ご想像におまかせしますよ」  はぁぁぁぁ、こんな探りあいみたいなつまらない会話うんざり。こいつのニヤけ顔もうんざり、もう見てるのしんど~。そろそろ誘ってみるか。 「ねぇ、あの奥の部屋って何?」 ちょっと酔ってきたフリして長谷川のスーツの袖口掴みながら体も少し近づけた。 「あぁ、向こうはVIPしか入れない個室がいくつかあるんだよ。私は入れるけどね。向こうで静かに2人きりで飲もうか?」  チョロ~い!何こいつ、こっちから仕掛けたら下心すぐ見せてきた。はぁはぁ、笑いこらえるのもしんど!しんど! 「うん……お部屋、見てみたいな」  こいつもチョロいと思ってんだろうな~。 バーテンダーに目配せをし、鍵を受けとる長谷川。ぼく酔っちゃったのだめ押ししとこ。立ち上がった途端によろけておっさんに体重かけてみる。 「あっ、ごめんなさい。自分で思ってるより酔いが回ってるのかも」 「楽しいと酔うの早かったりするよね。大丈夫、掴まって。さっ、行こうか」 「うん」  きしょーい。おっさんきっしょ。腕に掴まって体重を預けるようにして、奥のVIPルームとかいう如何わしいとこについていく。俊、行くぞ、よろしくな。わんこも適当にな。  一方、近くのテーブルから見守っていた俊は小型の無線を手にする。 「こちら俊。裕司さん、亮ちゃんが動いた」 「早いな。危ないからお前らちょっと早めに行けよ。くれぐれも亮二に殺しをさせるな。ヒートアップさせるな」 「分かってるって。社会的抹殺…でしょ」 「あぁ、頼んだ」
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