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一見和やか、実は腹の探りあいな気持ちの悪い会話は続く。
長谷川は俺を酔わせたいようで、しきりに酒を勧め、グラスが空かないうちに次の酒を注文する。
注文をとるのはいつも同じバーテン、て事はあいつが長谷川の仲間っぽいかな。
多分カクテルの酒の量増やしてアルコール度数あげて早々に酔わせようって魂胆だろうけど、こっちはこの見かけと違って酒豪なんだよね、おじさん。残念でした。そこまで我を忘れるほど酔っ払ったことないんだよね。
多分金持ちの女だって、目星がついたら薬も入れられてんじゃねぇかな。まずは既成事実作っちまえ的に。
女性って大変だなぁ。
新しく目の前にきた酒はドライ・ジンのショット。アホか。俺と飲み比べしてんのかよ。多分計りかねてんだろうなぁ。
良さそうなスーツは着てるものの、若いからもしかしたらホスト系かもってか。
とりあえず酔わせてヤっちまって身分証でも探す魂胆?
「で、お兄さん正直モテるでしょ?女からも…男からもかな?」
「そうですね。……ご想像におまかせしますよ」
はぁぁぁぁ、こんな探りあいみたいなつまらない会話うんざり。こいつのニヤけ顔もうんざり、もう見てるのしんど~。そろそろ誘ってみるか。
「ねぇ、あの奥の部屋って何?」
ちょっと酔ってきたフリして長谷川のスーツの袖口掴みながら体も少し近づけた。
「あぁ、向こうはVIPしか入れない個室がいくつかあるんだよ。私は入れるけどね。向こうで静かに2人きりで飲もうか?」
チョロ~い!何こいつ、こっちから仕掛けたら下心すぐ見せてきた。はぁはぁ、笑いこらえるのもしんど!しんど!
「うん……お部屋、見てみたいな」
こいつもチョロいと思ってんだろうな~。
バーテンダーに目配せをし、鍵を受けとる長谷川。ぼく酔っちゃったのだめ押ししとこ。立ち上がった途端によろけておっさんに体重かけてみる。
「あっ、ごめんなさい。自分で思ってるより酔いが回ってるのかも」
「楽しいと酔うの早かったりするよね。大丈夫、掴まって。さっ、行こうか」
「うん」
きしょーい。おっさんきっしょ。腕に掴まって体重を預けるようにして、奥のVIPルームとかいう如何わしいとこについていく。俊、行くぞ、よろしくな。わんこも適当にな。
一方、近くのテーブルから見守っていた俊は小型の無線を手にする。
「こちら俊。裕司さん、亮ちゃんが動いた」
「早いな。危ないからお前らちょっと早めに行けよ。くれぐれも亮二に殺しをさせるな。ヒートアップさせるな」
「分かってるって。社会的抹殺…でしょ」
「あぁ、頼んだ」
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