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魔法陣が敷かれていて、その上に二人の男女が立っている。
二人は煤ぼけた学生服のまま虚ろな目で、何事かを口ずさんでいた。
それは紛れもない魔術の詠唱だった。
まるで、もう何日間もそうやっているように見もえた。
「あ! あれは?! 誘惑の魔術よ!! 昔、本で読んだから詠唱だけでわかるわ!!」
「?!」
「多分、学園の生徒か先生をここへ呼びだしているんじゃないかしら?!」
咄嗟に奴隷の書を開けた白花が、前に出て癒しの詠唱。つまりは魔術反抗魔術を口ずさんだ。
だが。
「うっ?! 頭痛ってーー!」
「え、何?!」
「うぃーー、頭痛いー!!」
急に弥生たちが頭を抑えて呻きだした。
ぼくは魔法障壁のお蔭で何ともないが?!
誘惑の魔術? 催眠術のようなものか?
ぼくは雷を発生させるため生体電流を放出して掌を天にかざそうとした。
「う?! なんだ!」
ぼくは嫌な予感がして後ろを振り向いた。屋上へと通ずる階段から、下からバタバタと大勢の走る足音がした。
「零くん! このままじゃ……相手の目的や何をしようとしているのかさえ、まったくわからない。けれど、絶対に何かよくないことが起きるはずよ! できるだけ急いで! 魔術書を持つ人を見つけるの! 私の生体電流もいつまで持つかわからないわ!」
大雨の降る屋上で、白花は一人で魔術反抗魔術で、虚ろな目をした男女二人の誘惑の魔術を邪魔していた。
さて、どうする?
白花たちは今は行動ができない。
ぼく一人でこの不可解な謎を解かないといけないんだ。
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