悪魔の書

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「くっ! 離せ!!」  突然、ぼくにだけ大勢の生徒たちがまとわりついてきた。  凛は屋上へと一目散に逃げて行ってしまった。  なんて、薄情なんだ! 「チッ!」  ぼくは舌打ちした。このままでは、火炎系の魔術も空気系の破裂の魔術も使えない。英雄の書の力だと、強力すぎて確実に人は死んでしまう。そこで、ぼくは考えた。  屋上へのドアが開いていて近いから、雷を生体電流で呼んで身体を微量に帯電した状態にするのは?  そうすれば、人間は痺れてぼくに触れられないはずだ。  あるいは、生体電流だけで生徒たちを弾き飛ばすのは?  さあ、どれがいい? 「俺に任せろーー!!」  突然、後ろから敦の威勢のいい大声が聞こえた。  同時にゴンッと鈍い音がしたと思ったら、ぼくにしがみついていた生徒の一人が殴り飛ばされた。 「凛が俺を酷い頭痛から助けてくれたんだぜ! なあ、零! 頭いいよなあいつは! 直接、俺の頭に生体電流ってやつを全て流し込んでくれて、そんでもって悪魔の書の本の力を追い出したって言っていたぜ! でも、一人分しかできないんだってさ!」  ぼくは一人。一人。と敦によって、ぶっ飛ばされていく同じ学園の生徒たちを見て……。  呆れてしまった……。  皆、男子だけだったからいいものを……。  いや、靖は知っていたのかもしれない。  生体電流で、常時守られたぼくを抑えつけられる力を持つのは、男子くらいだからだと。    ……多分だが。 「バカとハサミは……かな?」 「あんー? なんだってー? 今、忙しいんだ! 後でな!」 「いや、ぼくを助けてくれてありがとうって、言おうとしたんだよ」  ぼくは、悪魔の書を持つ教師に近づいていった。  これでようやく普通に戦える。
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