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鮮魚の宇佐美さん②ー2
「クレームだクレーム! どうしてくれんだ」
休日の介護職さんの荒げた声が響き渡る。お昼前の時間帯は比較的お客さんの入りは少ない。少ないながらも目立つわけで、前回同様やはり注目を集めることとなった。
「俺は口の中をケガしたんだぞ、どうすんだ!」
何やらただ事ではない気配を感じる。
発注の締めVS聞き耳。う~ん、聞き耳!
「医者にも行ってきたんだ! 医者代もよこせ!」
かなりご立腹な様子でまくしたてている。宇佐美さんは180cmの高さから頭を下げ「申し訳ございません」と言っている。でもなんだか変な感じがする。平身低頭謝っているわけではなさそうだ。
まぐろの中落ちに骨が混ざっており、知らず口の中で噛んでしまったため、ケガをした。
休日の介護職さん
・商品代の返金請求。
・医療費の請求。
・慰謝料の請求。
宇佐美さん、
・まぐろの中落ちはスプーンで掻き取るもの。
→大きな骨にそって掻き取るから骨の混入はありえない。
→証拠として持ってきた骨は、まぐろじゃないようだ。
・レシートは?
・どこの病院?
・領収書は?
休日の介護職さんは、やや怯んでいるようだ。それでもモゴモゴと何かを言い止めないでいる。完全に主導を握っていた宇佐美さんがにじり寄る。
「お客様、ご迷惑をおかけし大変申し訳ございませんでした。一度中へ入って頂きお話を進めましょう。弁護士とも連絡が取れますので、一度中へ」
さらなる怯みを見せた休日の介護職さんは、
「あーうるせー! 次あったらただじゃ済まさねーからなー!」
立ち去って行った。持参した魚の骨もお持ち帰りだ。
宇佐美さん曰く「この間の腹いせじゃねーか、あれ」とのことだった。浅はかなでっちあげで逃げ帰ることになったのは悔しかったろう。
実際、ケガ云々って話にならず、良かったと思う。賠償まで進んだら大事だからね。
ただ、ああいったタイプは逆恨みで根に持つから、悪い口コミや☆1評価で勝負してきそうだ。ま、そんな知恵はないと信じたい。そして、三度目はナシであってほしい。
そう願いながら、私は私の発注を締め時間内に滑り込ませることができたのだ。
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