今日も今日とて僕を呼ぶ

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 まあ、それもお嬢様系のアニメを真似していたというのなら頷ける話だ。浮きまくっていることに多分本人は気づいていないのだろうが。 「喋り方はそれでいいけど、何であんな高飛車っつーか傲慢つーか生意気な態度なんだよ」  僕は呆れ果てて言う他ない。 「教室が目の前なのに、わざわざ僕に声かけてきてお前を呼び出させるし。つか、自分で探せよって場面でも僕に探させるし。お前、あいつに僕のことどう教えたんだよ、こっちはろくに面識もなかったっていうのにさ」  そう告げると、えっと、と輝明は露骨に視線を泳がせた。おい、なんでそこで動揺してるんだお前は。 「……非常に言いづらいことなんだけどさ」 「うん」 「それも、多分アニメの影響。えっと、あいつが一番ハマってるのが、“異世界転生したら悪役令嬢の従者で、何故かお嬢様にモテまくってます”なんだよな。だから、あいつの喋り方は悪役令嬢のカテリーナの真似なんだけど。……その悪役令嬢がツンデレキャラでさ。そのツンデレに、転生した主人公の男がきゅんきゅんしちゃうラブコメ要素が強いんだよな、あのアニメ」 「あー、確かにそういう話だったような。序盤しか見たことないけど」  異世界転生モノは、ハーレム要素や逆ハーレム要素がセットになっていることも少なくない。なるほど、その悪役令嬢っぽくツンデレなお嬢様を演じたらモテるとでも思ったということらしい。  と、そこまで考えたところで僕は首を捻った。 「ん?生意気な態度とかはわかったけど、だからって僕を毎回呼ぶ理由になってなくね?」 「……まだ気づいてないの、駿」 「え」 「いや、こっちが“え?”なんですがそれは」  どういう意味だ、と思って固まった。  そうだ、何で彼女は後姿だけで、僕が六年三組の生徒だと気付いた?会って喋ったこともなかったのに僕の名前を知っていた?  そして毎回、わざわざすぐ傍にいる兄貴を自分に呼び出させるのは――。 「……察した」  いろいろと理解してしまって、僕は頭痛を覚えた。顔が少々熱いのは、気のせいということにしておこう。 「とりあえず、次に会った時にはいろいろ言わせてもらうわ」
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