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「そこの下々の者!」
「あーはいはい」
翌日の朝。教室に向かおうとしたところで、お約束の声がかかった。見れば、両手を腰に当てて仁王立ちする少女の姿が。
とりあえず、その下々の者っていうのはやめとけ、と思う。それから、数々の勘違いをなんとかしてやらねばとも。
ずっと年下の彼女を恋愛対象にできるかどうかはまだわからない。そもそも、まだろくに彼女のことも知らないのに一足飛びすぎるというものだ。だから。
「私の兄を呼んでらっしゃい!今すぐ……」
「そんな遠回しなことしなくていいよ、もう。それと、俺の名前は水口駿。覚えてんだろ、ひとまず次からはちゃんと名前で呼んでくれよ」
「え」
きょとん、とした後。顔を真っ赤にする彼女。口の中でぼそぼそと“名前呼んでもいいのかよ”とぼやいたのが聴こえた。なるほど、それが本来の喋り方らしい。
「名前でいいよ。あと、僕、ツンデレお嬢様より素直でボーイッシュなくらいの子の方がとっつきやすくて好きだな」
さてさて、これからどう転ぶやら。
先の展開は文字通り、神のみぞ知るところである。
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