【2】Trial 〜試〜

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草吹霞(くさぶきかすみ)が告げる。 「飛んでいたのは、もう一つ。多分…あれは、人。黒いフライングスーツだと思うわ」 「人っ⁉️」 予想外の話に驚く皆んな。 そこで土屋が割り込んだ。 「昴さん、あの『スカイダイバー』の映像を見せてください」 「はぁ?ドームホテルからの録画映像を?」 首を傾げながらも、モニターに映す昴。 ドームをバックに、ホテルの屋上から飛び立つ夢川翔(ゆめかわしょう)。 直ぐに自分目線の夜景に変わり、少ししてカットされた。 「彼の動画はアメリカでも人気です。昴さん、少し戻してくれる、スローで」 ゆっくり逆再生していく。 「ストップ!」 「なんなのよ?」 「このビルのオフィスにズームできる?」 「アイ、いる?」 突然ラブが呼んだ。 「はい、ラブ様」 サブモニターにアイの擬似体が映る。 AI(アイ)は、TERRAのメインシステムで、ラブの頭脳と繋がっている。 「あのオフィスを調べて」 昴が目一杯寄るが、投稿されたドローン映像では限界であった。 「分かりました。明和不動産飯田橋支店です」 「電話を」 ラブの携帯発信で、電話をかけるアイ。 スピーカーに切り替えるラブ。 「はい、明和不動産です」 「遅くにすみません、トーイ・ラブです」 「はぁ?イタズラはやめてください」 「待って、切らないで❗️アイ!」 アイが回線に侵入し、スマホをカメラ通話に切り替える。 切ろうとした彼が、画面に映ったラブに驚く。 「本物です、すみません」 「マジかよ💦は、はい…ラブさん、西崎と申します」 「実は、先日の事故の夜のことで、覚えていたら教えてほしいんですが…」 「えっ?あ…あの大事故ですね。私が退社した直後でした」 「では、最後に照明を消したのは、西崎さんなのですね?」 「ええ、いつも私が最後なので。それが何か?」 「いえ、ありがとうございます。大変助かりました。お仕事中に失礼しました」 彼には悪いが、早々に電話を切った。 (アイ、後はお願い) (分かりました) 西崎の着信履歴を消去するアイ。 「つまり、この映像は、あの事故の起きる直前ってことね。昴、最後まで再生して!」 画像が真っ暗にカットされ、暫く続く。 「やっぱり…」 咲と土屋が同時に呟いた。 「爆発音が録れてる…」 微かに爆発音があり、その後にハッキリと爆発音が聴こえた。 「後のはドームの花火だな。あんな事故の時に、花火なんか上げやがって❗️どこのどいつなんだか❗️」 「あの…それ…多分私です💧」 「えっ💦ラブさんなの⁉️」 「すみません…ドームでライブやってて…💧」 「あっ…そう💦ライブ…ね。…なら仕方ないな、そりゃあ全く仕方ない💦なぁ紗夜?」 最後は妻に助けを求める淳一。 「とにかく!あの事故と、夢川翔(ゆめかわしょう)は関係ありそうね。昴、彼を調べて❗️」 ………。 「何よ?彼はどこにいるの?」 「咲さん、それは…分からないんです。こういうインフルエンサー達は、みんな素性を明かしていないんで」 「マジ⁉️こんなに有名でも?」 「そりゃそうだろう。世界中の名所から飛んでんだ。警視庁ビルからも飛んだだろうが」 戸澤が咲を撃沈させた。 「あ…そうだったわね、忘れてたわ」 「あっ思い出した❗️」 「淳💧人が忘れてた横で、思い出さないでよ」 「昴あの時の車の持ち主は?」 「あっ…忘れてました💦」 (大丈夫なのかな、こんなんで…💧) 草吹の心の呟きに、苦笑いのラブ。 「あの時、現場近くから官邸にいる様な高級車が通りかかって、怪しいと思ってな」 「これです⁉️」 検索をかけたまま、忘れていた昴が驚いた。 「所有者は、国土交通省の羽戸山(はとやま)大臣⁉️」 「あの運転手は、羽戸山の…」 「なぜあんな時間に、あの現場に?淳、紗夜、明日の朝一で確認して!」 「分かりました」 夢川翔(ゆめかわしょう)は、国土交通大臣の息子。 航空機や世界中の高所からのダイビング。 全員が、間違いないと感じていた。
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