【2】Trial 〜試〜

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TERRA(テラ)地下本部〜 草吹霞とラブの片腕T2(ティーツー)が、マザーシステムAI(アイ)を利用して、闇の動画配信元を探っていた。 「凄いわね〜アイって。世界中のシステムに進入可能じゃない」 「ありがとうございます、桐谷美月様」 「アイ、今は草吹霞さんよ」 「懐かしい名前ね。桐谷美月は、9.11で死んだわ。つまり…CIAを辞めた理由も知ってるってことね、ラブ?」 「念のために」 「そんなに悲しい顔しないでよ。辞められてホッとしてんだから」 そこへ、マネージャーの新咲凛(しんざきりん)が入って来た。 「ラブ、ハリウッドへ向かう時間よ。あら、新人さん?」 瞬時に、厳しい視線がぶつかり合う。 「どこかで…会ったかしら?」 「いいえ、誰かの間違いじゃない?私にCIAの知り合いはいないわ。ラブ、遅れないでよ!」 直ぐに出て行く凛。 「なるほど…ね」 「ま、まぁ💦霞、気にしないで、私は出かけるから、これ渡しとくわ」 カードを渡すラブ。 「部屋は62階、ビル内のジムや飲食店、医療機関まで、それを自由に使って」 「サンキュ、ラブ。ところで、例の『スカイダイバー』だけど、配信が始まった頃からの共通サーバから、おそらく本拠地はここね」 「西麻布?」 「半分勘だけどね。この角にある麻布ビルの8階にある、Dream(ドリーム) System(システム) Service(サービス)って会社が怪しいわ」 「さすがね。アイ、咲さんに送って。じゃあ私は行くわ。その調子でGuard(ガード)もお願い」 「任せといて!」 (霞…) その背中を、寂し気な瞳で見つめるラブ。 (ラブ様、霞様はお任せください) それを知っているアイが告げた。 〜警視庁対策本部〜 「全員聞いて、霞さんが夢川翔の会社を見つけたわ。昴が携帯へ送るから、手が空いたら向かって」 「咲、俺にも頼むぜ」 「神⁉️どうして?」 「余ってたから、一つ借りて来た。便利なもんだな」 通信機を耳に付けていた。 「んもう〜昴、送って」 「ハイハイ」 携帯に送られて来た地図を見る。 「近いな。原田、ここへ迎え!」 真っ赤なベンツが現地へ向かった。 〜東大病院〜 医学部に入ると、常盤莉里から連絡をもらった、中川さゆりが待っていた。 「こっちこっち」 手招きされ、誰もいない教室へ入る。 「莉里から聞いたわ。ホントは言っちゃいけないんだけど…刑事さんなら仕方ないか」 話したいオーラが、淳一でも分かった。 「あの夜、丁度私は夜勤当番で…なかなかいないのよね〜夜勤やりたがる学生って。だから、私は皆んなの代わりに、引き受けてるのよ。点数稼ぎじゃないわよ、患者さんのために…」 「凄いわね〜立派❗️で、運ばれて来た人は今どこに?」 強引に話を切る紗夜💧 「あっ、そうだった。頭や脚や肩に怪我してて、何故か脳神経外科の松平先生がもう居て、直ぐにオペ室へ。なんかヒラヒラした変な服着てたわ。今は、15階のVIPルームよ。かなり偉い人の息子さんね」 「ありがとうございます。たすかります」 まだ何か言いたそうな彼女を振り切り、エレベーターへと向かう。 丁度、最上階の15階から、エレベーターが降り始めたところであった。 「咲さん、もうすぐ夢川翔…いえ、羽戸山翅早(はとやまつばさ)の病室へ着きます」 「了解」 エレベーターが開く。 車椅子でマスクをした女性が乗っていた。 ドアを止め、道を開ける2人。 うつむいたまま、軽く頭を下げた彼女。 ドアが閉まる。 (フッ…) (…何?) 何か違和感を感じながらも15階に着いた。 フロアに集中する紗夜。 「15階には1人しかいないわ。3つ目の部屋よ…えっ1人?」 (やられた⁉️) 部屋の前にバッグが置かれていた。 「淳、伏せて❗️」 「ドドドーン💥💥❗️ 「紗夜っ⁉️」 咄嗟に紗夜を庇って倒れ込む淳一。 爆炎が、部屋の中へ向かって吹き出し、全てを燃やしながら、裏側へと突き抜けた。 「クソッ!さっきの彼女よ❗️」 「大丈夫か紗夜。さっきのって車椅子のか?」 「ええ、車椅子じゃ、この15階のボタンには届かない。だから、呼べるわけないのよッ!」 その時、(じん)の声が通信機から聞こえた。 「今、例のビルの前を通り過ぎた…あん?原田、ありゃあ」 首都高速3号渋谷線の高架をくぐる。 「なんてこった❗️首都高の高架の壁に、あのマークがあるぜ❗️」 「なんですって⁉️」 「しかし…狙うにしては、車通りがほとんどねぇが…」 高架を抜けて、ベンツを停めた。 そして… 「こちら警視庁交通課、そちらへ向かう不審な暴走バイクを追跡中❗️」 「何?」 窓を開ける神。 沢山のサイレンの音が近付いて来る。 「咲、止めろ❗️罠だ❗️」 その瞬間、バイクが神の目の前を過ぎた。 「原田ぁー追え❗️」 「ギュルギュルギュル!」 白煙を上げて、発車するベンツ。 その後ろで… 「ヅドドドーン💥💥ヅガーン💥❗️」 ビルの1階から強烈な爆炎が噴き出し、通りかかったパトカーの群れを吹き飛ばした。 足元を砕かれたビルが、交差点の高速高架へと倒れて行く。 「キキキキキキー❗️」 「ヅガッシャーン❗️」 高速をビルが押し潰し、次々衝突して行く車。 追っていた十数台のパトカーも全滅した。 「クッソーッ❗️」「ダンッ💢」 咲の怒りの拳が、テーブルを叩きつける。 「情報が…漏れてる」 その昴の呟きに、霞が応えた。 「今回の情報発信元が特定できたわ。千代田区霞が関2丁目1番1号…警視庁本部ビルよ❗️」 「なんだって⁉️」 叫ぶ皆んな。 富士本が直ぐに連絡をとる。 「警視庁本部ビルから、情報漏洩。直ちにビルを封鎖してください❗️」 その僅か数秒前。 1台の車が、ビルから出ていった。
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