【2】Trial 〜試〜

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〜サウジアラビア〜 原油の主要積出港であるラスタヌラ。 順調に荷積み作業が行われていた。 自動制御化された設備により、船員達は陸に上がり、一晩の休養を過ごせた。 そしてその翌朝、OIL ARK 号は、ペルシャ湾に忽然(こつぜん)と、その姿を消したのである。 「艦長、いったい誰が?」 「彼女だ。JAXAの平泉結女 《ひらいずみゆめ》。置き手紙一枚残して、行きやがった」 全員が手紙を見る。 『雑賀船長と皆さん、すみません。皆さんの手当ては、それぞれの口座に倍額入金してあります。これよりこの船は、自動航行の実験に入ります。皆さんは別の船が今日出港しますので、それで帰国してください。これは、最初から計画されていたものです。?では、ありがとうございました』 「ふざけやがって!」 「いったい彼女の目的は何だ…」 目には見えず、レーダーにも感知されない、ステルスタンカーが、日本を目指していた。 〜新宿区西新宿〜 西麻布から外苑西通り418号線を疾走する、黒のバイクと真っ赤なベンツ。 信号はアイが操作し、巻き添え事故を防いでいるが、逃げるにも好都合であった。 サイレンを鳴らすパトカーでも、交通量の多い千駄ヶ谷から先で、バイクの追尾は不可能である。 しかし原田岬は違った。 プロレーサー並みのテクニックを持った、(じん)の専属ドライバーである。 「西新宿か…」 自分の庭ではあるが、細い路地が多い。 「神さん、コイツただのバイク乗りじゃねぇ、プロのレーサーですぜ」 神が電話を掛ける。 「近藤か?俺だ、今国立競技場前を抜けて、新宿へ向かって黒のバイクを追跡中だ。一帯に協力を仰げ。お前らは先回りして、なんとしても止めろ。絶対に宿から逃がすな❗️」 「了解❗️」 真っ赤なベンツとバイクの暴走劇は、テレビでも流れていた。 間違いなく組長だと分かった近藤は、連絡を待っていた。 「いいか皆んな、死んでもバイクを逃がすな❗️」 そうとは知らないバイク。 靖国通りを左折し、新宿方面へと進路をとった。 「ギャギャギャ!」 時速140キロで広い交差点を目一杯使い、ドリフトしながら曲がるベンツ。 聞こえてはいないが、周りから歓声が上がる。 新宿の裏路地では、各商店が邪魔な障害物を出し、油をまく者もいた。 (何なんだ、あのベンツは❓) バイクの男に、焦りの色が見えていた。 新宿区役所を過ぎたところで右折し、歌舞伎町への路地に入る。 「歌舞伎へ行ったぜ❗️」 ベンツは新宿駅を右折し、バイクと並走する。 路地の障害物を避け、速度が落ちるバイク。 「邪魔だ❗️どけ❗️」 ヘルメットの中で叫びながらも、上手く避けて行くバイク。 「キキー!」 その前方を左から来た車が塞いだ。 (クソッ❗️) 咄嗟に道に出された障害物を踏み台にし、アクセル全開で車を飛び越えた。 しかし、 その着地を、右からの黒いベンツが捕らえた。 「ガンッ❗️」 「ガガガガ…ヅン!」 吹き飛ばされたバイクが、火花を散らしながら路面を滑り、電柱で止まった。 「クッ…クソ」 ベンツからゆっくり降りる近藤義史(こんどうよしふみ)。 バイクの向こうに真っ赤なベンツが停まる。 「良くやった、みんな」 飛鳥神が、降りて近付く。 「何なんだお前ら、ヤクザがどうして警察に協力してんだ⁉️」 「周りを良く見ろ」 各店から、ゴルフクラブやバット等を持って、店員が出て来ていた。 「お前にどんな事情があるのかは知らねぇ。しかしなぁ、関係ねぇ人を殺すなんてなぁヤクザだけじゃねぇ、誰も許さねぇんだよ❗️」 「社会のゴミが!偉そうに言うな❗️」 瞬間で胸ぐらを掴み、電柱に押さえ付ける神。 それへ、怒りの拳が炸裂した。 「ヅガーン💥❗️」 ヘルメットのスモークシールドを粉砕し、鼻先1mmで止めた。 そのままヘルメットを剥ぎ取る。 「その度胸。余程の恨みがあるんだろうな…。確かに俺たちは、まともな社会から見ればゴミかも知れねぇ。だが今のお前は、そのゴミ以下だ。殴る価値もねぇ」 手を離し、車へと歩き出す神。 「連行する。そいつを乗せろ」 「へい。おら、来い!」 原田が運転席に乗り込み、近藤が彼を後ろに乗せた。 反対側で何かしている神。 「神さん、何やってんすか?」 「な…何でもねぇ💦台場へ行け」 乗り込んだ神。 走らせながらソレに気付く原田。 「メット持って行くんすか?」 「ウルセェ!しょ、証拠品だ💦」 入り込んだ手を抜こうと、足掻いている神。 通信機から咲の声がした。 「神、そっちはどうなったの?」 「抜けなくなった💦」 「はぁ❓」 「あ…いや💦つ、捕まえたぜ。今そこへ向かってるところだ」 「やるじゃない、惚れ直したわ❣️」 「咲さん💧みんな聞こえてますよ」 昴が割り込む。 「マジ💦あらら…とにかくご苦労❗️」 真っ赤な顔で、慌てて通信を切る咲であった。
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