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【3】Grudge 〜怨〜
〜警視庁対策本部〜
神がバイクドライバーを連行してきた。
帰省していた土門も、調べを済ませていた。
そして、TERRAの開発部門を兼務している、国際医療テクノ大学の月島風花が入って来た。IQ230の天才的頭脳の持ち主である。
「風花さん、草吹さんは?」
「ちょっと…手が離せなくて、代理で私が」
(さすが天才。読まれない様に原素配列を繰り返してる…)
つまり、嘘をつくだけの理由があると言うことである。
「さて、まずはアイツだけど…」
取調べ室へ戸澤が連れて行った。
顔認証で昴が照合し、モニターに映す。
「長平蓮28歳。現役のプロのレーサーです」
「やはりな、うちの原田が苦戦したわけだ」
「ドン」
「………じ…神💦、何これ?」
「み、見ての通り、証拠品のヘルメットだ💦」
「抜けなくなったってこれ💧昴、技術班に写真送って、呼んで」
「しゃ…写真はいらねぇだろうが💦」
「こんな状況を想像できると思うの?ほら、早くして、神❗️ポーズはいらないから💧」
「し、しかし…よく捕まえてくれた。後で表彰を申請しとくよ」
「部長、ヤクザを表彰するわけないでしょ💧」
しかし花山警視総監は、警視庁舎で異例の表彰を行い、仲間を殺された警察官達からも、温かな拍手が贈られたのである。
緊張で、カキンコキンになった神は、
咲と近藤の待ち受け画像になった。
戸澤が返って来る。
「とりあえずは、事故の前映像と、慰霊式のビデオを流しといた。…何やってんだ神?」
「気にしないでいいから、進めましょ」
「あのドライバーからは、夢川翔を殺った達成感を強く感じました」
「つまり紗夜、あなた達が病院で会った女性とグルってことね」
「というより…あの冷静さ。彼女が主犯かも知れません。それに…まだ彼女は満たされていない気がします」
昴がモニターを切り替えた。
「羽戸山大臣の緊急記者会見が始まります」
「羽戸山大臣が?」
予想外の動きであった。
「昴、取調べ室にも流して」
咲の勘が、その必要性を感じた。
「それでは、報道関係者の皆さん、急な発表にお集まり頂き、ありがとうございます。この記者会見は、羽戸山大臣本人の意向で行うものであります。息子さんを亡くされたことを、どうか考慮して頂きます様、お願いします」
泣き腫らした赤い目で、羽戸山が立った。
まずは、深々と頭を下げた。
「大臣は、知っていたのね」
そして、両拳をテーブルに付け頭は上げず、半かがみのまま話し始めた。
「私の息子は、早くに母を病気で亡くし、落ち込む私を、いつも明るく励ましてくれました。それ故に、少し自由にさせ過ぎたのかも知れません。夢川翔として、『スカイダイバー』と言う番組を立ち上げ、世界中から沢山の応援を頂いていました」
歯を噛み締めた頬を、涙が伝う。
「しかしその一方で、夢川翔に感化され、無謀なダイビングで命を落とす者もいました。息子はそれをいつも本当に悲しんで、苦しんでいました。息子は決して彼らを無視できなかった。だから、同じ危険な場所から、敢えて飛んでいたのです。あれは、息子なりの…供養だったんです❗️」
「嘘だ❗️出たら目を言うな❗️」
取調べ室へ向かおうとする戸澤を、止める咲。
「まだよ!」
「皆さん。ビデオがあったら、ぜひ見てやってください。先人が失敗して亡くなった場所から飛ぶ息子、夢川翔を。最新のウィングスーツではなく、全く同じ道具で、自分の勘と技術を信じて、亡くなった方の夢を叶えたんです❗️」
「違う❗️アイツは…アイツは…」
取調べ室の声が、震えているのが分かった。
「だから、そこを飛んだ後は涙を流し、決して笑顔は見せなかったんです。アイツは、そういう人間でした」
「そう言えば…」
「どうしたの昴?」
「確かに大臣の言う通り…古いスーツで飛んだあとは、涙はあれど、笑顔は無かった…」
「とんだ勘違いってことね…有名人であるが故の誤解…なんて愚かな」
「ただ、彼らを死に至らしめたのは事実。また、違法な場所からのダイビングも大きな罪です。それを知っていた私も、同罪です」
深々と頭を下げる。
そこで声がした。
「謝罪はそれで終わりかしら?羽戸山大臣?」
(誰だ?誰なんだ?)
会場の騒めきが伝わって来る。
「ど…どう言うことだ?」
「5年前の冬。息子さんはハワイから帰りましたよね、無事に」
予想外の展開に、戸惑う羽戸山。
「君、どこの者かね?関係ない話はやめなさい!」
「全っ然、関係なくないわ❗️」
「彼女…もしかしたらあの病院にいた❗️」
声だけで伝わる、凄まじい怨みの念。
間違いないと思う紗夜。
「ユナイテッド航空475便。忘れたとは言わせない❗️後から来たハワイアン航空288便には、十分な燃料があった。なのに、貴方は先に息子を降ろさせた。あの357人は、貴方が殺したのよ❗️」
騒然となる会場。
もう手がつけられない。
「で、では今夜の会見は終了します。ご苦労様でした」
「忘れるな❗️」
騒めきがピタリと止む。
「お前が殺したのは、それだけじゃないってことを❗️」
1人が、壁に設置されたスピーカーとカメラを見つけた。
だが、既に声の主は繋がってはいなかった。
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