【1】Moment 〜瞬〜

2/7
前へ
/34ページ
次へ
〜首都高速5号霞ヶ関線〜 東京方面へ走る小型乗用車。 松川里美(まつかわさとみ)、27歳。 20時過ぎ。 混んでいても流れの速い首都高である。 大型タンクローリーに(あお)られつつも、車線を変えられないでいた。 中央本線水道橋駅近くの、二重高架に差し掛かった時。 「バンッ❗️」 何かがぶつかった音と衝撃に、思わず急ブレーキを踏んだ松川。 クラクションを鳴らし、タンクローリーも急ブレーキをかけ、ハンドルをきる。 「ギギギギギィィー!ガンッ❗️」 弾き出された松川が、対向車線へ飛ぶ。 (あっ…) 衝撃から放たれ、無重力感が現実逃避を生む。 何でもない記憶が、ふっと頭を()ぎる。 (死んじゃうの…かな…私?) スローモーションの様に過ぎる一瞬。 高速バスをギリギリかすめ、比較的すいていた路面を、路肩まで転がって止まった。 「ズガガガッ!」 右カーブでの急ブレーキに、トレーラータンクが耐えきれず、左側車線の車を跳ね飛ばしながら、側壁を破り高速から飛び出す。 丁度水道橋駅を出た電車と、反対の飯田橋駅からの電車が、すれ違う僅かな瞬間。 その真上へ満載のタンクが落下した。 「ド💥ドドーン💥💥❗️」 大爆発と共にガソリンが飛散し、一瞬で高架周辺を火の海に変えた。 爆発の衝撃で、中央本線の古い高架が崩落し、さらに下の道路にいた車列を押し潰す。 「ヅガガガ❗ド️ドーン💥」 玉突き事故が重なる首都高。 脱線し落下する中央本線。 踏み潰される一般道。 凄まじい爆発💥が誘発し、炎が勢いを増して拡大する🔥。 最悪の大事故となった。 その頃。 〜ホテル メトロポリタンの屋上〜 爆音が響き、反射的に身を沈める紗夜と淳一。 それに続いて爆炎の熱波が伝わって来た。 「な、なんだありゃあ❗️」 「大変な事に…」 直ぐに耳の小型通信機を入れる紗夜。 「紗夜です。たった今水道橋駅付近の首都高で、多重事故による爆発を確認しました❗️」 「事故?」 警視庁刑事課の敏腕刑事、鳳来咲(ほうらいさき)が、システム担当の神崎昴(かんざきすばる)に目で合図を送る。 全員が耳の通信機で通じていた。 メインモニターを分割して、周辺にある監視カメラ映像が映る。 「何これ?どうしたらこんなことに…」 刑事課にいた部長の富士本恭介(ふじもときょうすけ)土屋香織(つちやかおり)も立ち上がり絶句する。 「紗夜、投身自殺の女はどうなの?」 (しまった!) 「…あれ?」 既に彼女の姿はない。 「マジかよ⁉️」 慌てて下を覗く淳一。 しかし…何の異常も見当たらない。 「大丈夫…の様です。とりあえず、事故現場へ応援に向かいます」 「了解!気を付けて」 「ドーン💥」 ビクっとする2人。 東京ドームで花火が上がった。 「こんな時に花火かよ💦全く、紛らわしい!」 急ぎ現場へ向かう2人であった。
/34ページ

最初のコメントを投稿しよう!

108人が本棚に入れています
本棚に追加