108人が本棚に入れています
本棚に追加
〜警視庁対策本部〜
外線は全て本庁へ自動転送されている。
花山の計らいであった。
昴が残り、一心不乱にアイから貰ったリストを調査している。
「富坂の検死結果が出た。やはり、羽戸山の記者会見騒動の後だな。双葉麻耶の言っていたことは、真実だと言うことか。ひでぇ話だ」
一番責任を感じているはずの昴。
それを放っては置けず、豊川が残っていた。
「豊川さん、私は大丈夫ですから、自分の仕事に戻ってくださいよ」
「部長なんて暇なもんだ、気にすんな。それに…こんな時に女子大生と2人っきりってのも何だろう…」
「わ、た、し、は、勉強と研究とTERRAの面倒と、Vsingerのお仕事で忙しいから、恋なんてしてらんないの。ご心配なく!」
月島風花もいた。
IQ230としては、見落とした感が半端無く、最後まで付き合うつもりであった。
「それに…飛び出してった霞さんも心配だし」
「彼女、そんなに悪いのか?」
「とても動ける様な状態じゃないのに…モルヒネ1ケース持って行っちゃった」
「無茶苦茶だな」
「その霞さんが、最後に見てたのが、先日経済産業大臣になった、大蔵要人なんだよね」
「えっ?それってもしかして、要人って名前の?」
「名前では、要人と書いて、かなめって読むことがあるのよ。それが?」
「これです」
昴がモニターに、5年前の成田空港の組織図を映した。
「大蔵要人は、当時の成田国際空港株式会社で空港運用部門の執行役員に就いてた人です❗️」
「国交省航空局への抜擢はよくあるが、羽戸山が、息子の恩の見返りとして、横の繋がりを利用し、自分の権力の幅をも広げようと画策したのかもな」
「いずれにしろ、そんな上からの指示に、主任や一管制官が、刃向かえるわけはないですね」
「ひどい話だけど、アイさんの見つけたフライトデータを解析すると、実は既に手遅れだったことも分かりました」
「何⁉️」
「燃料よりも、設備トラブルで高度が維持出来ず、墜落したのが事実です」
「じゃあもし、先にユナイテッド航空475便を降ろしていたら…」
「結果論かもしれませんが、おそらく滑走路上に墜落し、他の航空機も降りられなくなっていたと思います」
「機長はそれを隠していたってことか。気持ちは分かるが、失格だな」
「結果的には最良の指示となったとしても、力で押さえつけた不正は許せません❗️」
(やっと元気出て来たか。全く面倒臭ぇ)
この単純な生真面目さが気に入っていた。
「それから、やはり公表された搭乗者リストには、生存者の名前はありませんでした。でも、さすがアイさん!原本を見つけてくれて、これです!」
松川里美の名前が載っていた。
「よし、証拠指紋もあり証言者もいる。昴、指名手配を要請しろ❗️」
「私…がですか?」
「今のここで、それができるのは、刑事課のお前だけだぜ!」
「分かりました!」
「はい、掛けといたから」
横から月島が受話器を渡す。
「こちら台場の対策本部刑事課の神崎昴です。羽戸山翔早の殺害示唆、及び2件の爆破事件の主犯として、松川里美を都内全域指名手配を願います❗️」
「松川里美は、最初の多重事故の被害者だろうが?」
「はい、でも西麻布のビルから見つかった爆弾の指紋と彼女の指紋が一致しました。逮捕した長平蓮も声を聞いて、間違いないと証言しています❗️」
「マジか。分かった証拠資料と写真を送ってください」
「写真…あちゃーねぇぞそんなもん💦」
「何でないのよ〜!監視カメラとか、免許証とか?なんかないの?」
「容疑者や犯人以外の記録は全て残さないのが、ここと本庁のやり方なんだ。ましてや被害者なんて残さねぇ。いつ漏洩するか分からない世の中だ、ならば持たないってことだ」
「ありますよ。今から送ります」
「了解、直ちに指名手配をかけます。本庁も今回は怒り💢狂ってるから、助かるよ!」
写真をモニターに写した。
「し…心霊写真か?」
「紗夜さんが念写した彼女です」
「念写⁉️そんなことできんのか💦」
「それだけ怒ってるってことですよ❗️これを画像処理して復元したのが、これです」
「松川里美だ❗️」
〜都立総合医療センター〜
「部長…あれ」
咲が待合室のテレビを指差した。
『警視庁は先程、都内で起きた2件の爆破事件の首謀者として、松川里美 27歳を指名手配しました。更に驚くべきことに彼女は、東京ドーム近くで起きた多重事故の被害者でもあり、また、5年前の成田空港旅客機墜落事故の、唯一の生存者であることも、公表されました。先日の羽戸山大臣記者会見との関係性も疑われます。果たして…』
「昴の奴、やりやがったな❗️」
「消えた…」
手術中のライトが消えた。
「はぁ?紗夜、何言ってんだ?」
「土屋さん!戸澤さんは、生きてます❗️大丈夫。皆んな、戸澤さんは助かった❗️」
喜び溢れるところへ出てきた執刀医の立場💧
「ありがとうございます先生❗️」
(な…何で?どうして?見てたのか💦)
「ちょっと皆んな、話を聞かなきゃ💦」
慌てながらも、笑顔と涙が抑えられない紗夜。
花山も富士本も咲も、亡くなった悲しみは噛み締めて、助かった命を喜ぼうと思った。
何故かこの夜。
新宿のあちこちでも、万歳三唱が聞こえた。
最初のコメントを投稿しよう!