【終章】Consolation 〜慰〜

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〜大田区令和島〜 警視庁が合同会議を開催している頃。 令和島の新しい石油プラント『REIWA』も、稼働の式典を開催していた。 TERRA TVの番組は、視聴率45%となった。 それに引き続き、報道番組は、この式典を映した。 現場にいるのは、プラントエンジニア達と、技術供与したJAXA(宇宙航空研究開発機構)の技術部長、国土交通省の羽戸山大臣、経済産業省の大蔵大臣、東京都知事など50名余り。 両大臣のところへ、技師長が来る。 「本日はおめでとうございます」 「いやいや、君達の働きのおかげだよ」 「羽戸山大臣、最後の大仕事ですな」 羽戸山は、今日を持って辞任を公示していた。 新任の大蔵大臣と堅い握手を交わす。 「その…開管式なのですが、実は昨夜から、1番菅で始まっていまして…」 「何?船はどこに?」 この岸壁1mに接岸しています。 目を凝らしても全く見えなかった。 「そ…そうなのか」 「本番で失敗を避ける為に、開始した様で…」 「まぁ、どうせあのバルブは飾り物だ、構わんよ。無事に帰還し、荷上げできているなら、万々歳だ」 ベージュの作業服に、短いつばのキャップを被った技師達が整列し、大きなモニターにプラントの全容が映し出される。 ドローンのカメラが十数台、位置についた。 この時、事件の報告は昴と豊川、富士本に任せ、咲と紗夜、淳一は別行動をとっていた。 「それでは皆様、東京都の新しい石油プラント『REIWA』の開業式を始めます…」 都知事の挨拶が始まる。 その裏で… 「どうだ、平泉と連絡はとれたのか?」 「それが、回線は通じていますが返信はありません」 「船員を置き去りにし、無人航行の末に自動ドッキングしたかと思うと、勝手に荷上げを始めるとは、何を考えてんだ?」 「しかし、彼女のおかげでほぼ全ての機能を確認できたのは大きいです」 「まぁ…確かに。かなり思い入れが強かったからな、平泉は…」 挨拶は、羽戸山大臣に代わっていた。 「…都の皆さん。この『REIWA』により、都内への石油の供給能力は、大幅に効率化され。皆さんの生活がより快適なものとなるでしょう。更に、驚くべきは、JAXAの協力により開発された、最新鋭の超大型石油タンカーの存在です。これについては、私には難しいので…JAXAの船越(ふなこし)技術部長に、説明してもらいましょう」 多少の不安を抱えながら、壇上に上がる。 「JAXA、宇宙航空研究開発機構の船越です。実は既に、今ここに、最新鋭のタンカーOIL ARK 号が接岸し、プラントと繋がっています」 プラントエンジニア達も、見た者は少ない。 何もない海に、あると言われても、誰も信じられない。 「石油タンカーは、通称オイルロードと呼ばれる、日本からサウジアラビアまで、全長約1万キロの航路を片道20日間かけ、約3億リットルの原油を運びます。途中、ペルシャ湾、アラビア海、スリランカ沖、インド洋を通り、スマトラ島北岸の魔の海峡、マラッカ海峡という難所を抜けます」 モニターにはその映像が映る。 「帰りには海賊に占拠されることもあります。その為に、この通り」 何もない岸壁へ手を広げる。 「OIL ARK 号は、世界初のステルスタンカーであり、また燃料に原油を使わないタンカーなのです❗️」 (平泉…頼むぞ) すると、何も無かった岸壁の景色が変化し、僅かの時間で、想像を遥かに超えた、巨大なタンカーが現れた。 「おぉー」「凄い!」 驚きの後に拍手が沸き起こる。 〜対岸〜 「マジか⁉️」 「淳、何見てんのよ❗️」 「真面目にやんなさい❗️」 「更に、このOIL ARK 号は、30日間という短期間航行で、昨夜帰還しました。そしてなんと、中にいるのは、オイルロードなど知らない、JAXAの技術者たった1人なんです。完全な自動航行でサウジアラビアから無事に戻りました。自然に優しく、安全な船。それが、OIL ARK 号です」 再び拍手が鳴り響く。 〜艦内〜 「資源抜き取っといて、優しいとはね…ん?」 タブレットで会場を見ていた平泉。 そのズバ抜けた記憶力が、違和感を感じた。 ズームアップし、プラントエンジニアのリストと照合する。 「誰ですか〜このは?」 検索をかける。 (一人は…警視庁の刑事、指名手配中?もう一人は…該当なしか。新人かな?さぁて、面白くなりそうね) と、そこへJAXAのネットワークを通じて、外部からの通信が入り、データが送られて来た。 〜式典〜 「それでは、発起人である、羽戸山大臣の手で、OIL ARK 号から、石油プラントREIWAへのゲートを開けてもらいましょう!」 鳩山が、偽のバルブに手を掛けた。 「3、2、1、オープン🎉」 わざと重た気にバルブを回した🎊。 薬玉が割れ、拍手が起る。 それに応えて、両手を上げた羽戸山。 「バン❗️」 1発の銃弾が式典を一変させて行く。
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