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〜令和島〜
一斉に騒ぎ出すエンジニア達。
片足を撃たれた羽戸山が転がる。
「動くな❗️」
キャップを投げ捨て、前に出る。
「皆んな動かないで、逃げたら撃つ」
「あなた指名手配中の警察官ね?」
都知事が直ぐに気付いて叫ぶ。
「お願い、従ってください」
真剣な目に、威圧される皆んな。
「さて、羽戸山大臣、それから…大蔵大臣…いえ、元成田空港執行役の大蔵要人。先日の続きをやりましょうか」
「クッ…」
「5年前、吹雪の成田空港で、羽戸山、お前は息子が乗っている航空機を、先に降ろす様に大蔵へ指示した。経済産業省の席を条件にね❗️」
テレビには、テロップで告発文が流れていた。
彼女は、信頼できる報道局に話し、情報を回していたのである。
「可哀想に、あの時の主任管制官だった富坂さんは、記者会見の後に自殺したわ」
「自殺だと?お前が爆破して、刑事まで巻き添えに殺したんじゃないか!」
食い下がる羽戸山。
息子を失った今、生き延びる気は既に無い。
「爆破したのは、私じゃない!頭のイかれたあの女の仕業だ。それに…私にはどうでもいい。お前は、あの時の管制官の直訴も、権力で踏み潰した❗️」
「管制官の直訴…?」
「高田努…か?」
踏み潰した張本人である大蔵が呟く。
「ユナイテッド航空475便を、ミスで墜落させた管制官として責められ、まだ小さな子供までイジメと迫害を受けたんだ❗️」
「双葉麻耶さん…だったね?君に何の関係が?刑事としての正義か?」
「その高田努は私の兄。私は苦しむ3人の家族を励まし、警視庁なら何とか出来るかと思った。…しかし兄とお姉さんは、私に迷惑かけない様に、子供を連れて死んだ…比奈ちゃんはまだ5歳だったのに…」
涙で目が霞む。
〜艦内〜
(M.H. 双葉麻耶…か。どうする?)
この時、平泉の興味は別にあった。
〜令和島〜
「お前達だけは、絶対に許さない❗️」
銃口が至近距離で、羽戸山の額を狙う。
「私はもう…大勢の人達を殺す手伝いをしてしまった。彼女もあの事故の被害者だから」
「違う❗️」「違うんだ❗️」
「えっ⁉️」「なに⁉️」
月島と羽戸山の声が重なった。
「双葉刑事、私は事件を調べている月島です。5年前のユナイテッド航空475便は、墜落することになっていたの!」
「えっ⁉️」
動揺する双葉。
「今の反応からすると…墜落をヤツに依頼したのは羽戸山大臣、あなたなのね❗️」
(おっと。深いね〜)
艦内で傍観する平泉。
「い、いや、私は当時の警視総監から聞いただけで…指示はしていない」
(警視総監…風間英正か❗️)
刑事課の皆んなが理解した。
「双葉刑事、あなたはあの事故の生存者、松川里美に騙されたの❗️彼女は奇跡の生存者なんかじゃない。彼女が航空機に細工をして、墜落させた張本人なのよ❗️だから、生き残る方法も考えてあったの」
「誰だか知らないが、その通りだ。もしユナイテッド航空を先に降ろしていたら、滑走路上で爆発して、後の全ての航空機が墜落していた」
「そんな⁉️何故そんなことを?」
「ユナイテッド航空475便には、国家機密を知る2人の諜報員が乗っていて、松川里美は、その2人を消す為に雇われたフリーのエージェント。だから高速での大事故でも、怪我ひとつなく身を守れた」
(やはり…怪しいと思ってた通りか)
船の中で、ニヤリと笑む平泉結女。
「双葉刑事、信じては貰えないだろうが…私がハワイアン航空を先に降ろしたのは、そう言う理由であって、息子が乗っていることさえ、知らなかったんだ…」
「そんな…」
ひざまずく双葉麻耶。
「じゃあ…わたしの怨みも、あの長平っていうレーサーと同じ、勘違い…だったってこと」
「本当にすまない。私は罪な人間だ。こんな私のために、君が手を汚す必要はない」
羽戸山が、悪者ではないことが分かった。
「じゃあ…私はただアイツに騙されていただけ…。そんな…もう取り返しのつかないことをしてしまった」
噛み締めた歯が軋む。
「悔しい…月島さん、アイツを必ず止めて下さい!アイツは狂ってる…私は自分のケジメをつけます。…さよなら」
拳銃をこめかみに当てた。
「ダメーッ⁉️」「バシュ❗️」
皆んなが目を閉じた。
エンジニア達の隙間を抜けた弾丸が、双葉の銃を直撃していた。
「あなたは死ぬべき人じゃない」
硝煙が上がる銃を持って、草吹霞がいた。
(誰?この人?…やるじゃん)
嬉しそうに笑う平泉。
〜車中〜
「月島の勘はこれか❗️」
「さすがね、この先が恐ろしいけど💧」
〜令和島〜
突然、メインスクリーンの様子が変わった。
異様な雰囲気に、戸惑う人達。
「日本の警察もやるじゃない。私を見抜くとはね。でも、まだまだ終わりじゃないわ。アハハ、本番はこれからよ」
モニターに、デジタル時計が映り、カウントダウンが始まった。
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