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騒然とする会場。
カウントダウンが進む。
草吹霞により、双葉麻耶は確保された。
「君…警察なのか?顔色が悪いが…」
羽戸山の撃たれた脚をネクタイで縛る。
幸い動脈は外れて、ぶじであった。
「致命傷じゃ無いから…立ち上がらずに、じっとしていて…ください…」
息が荒い。
「誰だ、お前は?」
松川里美の声が問う。
無視して、双葉に尋ねる草吹。
松川が答える筈はなく、警察官の方が信用できる。
「ヤツの狙いは何?」
「まさか松川に利用されていたなんて…飛行場を狙っている様に感じました。かなり詳しい話までしてたので…」
「やはり、成田ね…」
「いえ!羽田空港です」
「羽田⁉️…そうか、クソッ❗️」
「彼女がフリーのスパイだったなんて…。とにかく彼女は武器の使用に長けています。私は大量の武器を彼女に…渡してしまった」
「無視か…まぁいい。あと5分もすれば、プラントに仕掛けた爆弾が爆発する。せっかくの施設が一瞬で消え、はるばる運んだ大量の原油で、東京湾は火の海🔥となるのよ❗️」
「なに⁉️」
「羽戸山、大蔵。お前達の思い通りにはさせない。お前達は、東京湾を焼き尽くした元凶として、世界に名を残すがいい。既にこの動画視聴数は20億を超えた。どうだ?インフルエンサーになった気分は?アハハ」
耳の通信機を入れる霞。
「紗夜さん、咲さん聞こえますか?」
「草吹さん⁉️」
「ヤツはまだ大量の武器を持っています。ここは、私が何とかするので、ヤツを止めて下さい。恐らく狙いは旅客機。もうすぐ羽田にアジア諸国の要人達が来ます。ヤツの本当の狙いはそれよ❗️」
「プラントは囮ね❗️」
「東京湾の破壊が囮だなんて…正気じゃない」
「もうすぐ着くぜ…ん?」
何かが光った。
次の瞬間…
「ドドドーン💥💥💥」
旧管制塔のある大きな立体駐車場が、大爆発し、爆炎と共に多数の車が落下して行く。
「限度ってもんがあるだろが❗️」
車を停めて、動きを確認する。
無闇に入ると、救助の邪魔になりかね無い。
「あっちは多分目眩し、本命は管制塔のはず」
東京国際空港、通称羽田空港のランドマークと言える、高さ116mの高層管制塔。
空港警察や消防隊、警備員達が慌てて出動して行く。
そのパニック状態の中。
1人の清掃員が、大きなカートを押して入り、降りて来たエレベーターに乗った。
誰も気に留めている余裕はない。
「淳、今のうちに管制塔へ急ぎましょ!」
管制塔側の施設から、隊員達が出たのを見計らって、大きくループした道路で、管制塔へ向かった。
〜管制塔内〜
道路を何本か挟んで、崩れていく建物を見下ろす管制官達。
「警備員は下に降りて、侵入者を防いでください。皆んなは持ち場に戻って、航空機に集中して」
初の女性統括部長、生島冴子。
冷静な判断力が定評の責任者である。
「部長、既に沢山のパイロットから、情報の問い合わせが殺到し、回線がパンク状態です!」
「でしょうね。モニター通信で、管制と滑走路は問題なしと全機に伝えて!落ち着いて一機ずつ安全に降ろして。成田へ回せる機は回してみて」
その後ろ。
警備員達が装備を確認しながら、上がって来るエレベーターを待つ。
「よし来た、行くぞ!」
ドアが開いた瞬間。
「ガガガガガカ…❗️」
カートに乗せた重機関銃が警備員を吹き飛ばし、強化ガラスが内側から撃ち砕かれる。
「皆んな隠れて❗️」
その生島の声は手遅れであった。
何人かが撃たれて吹き飛ぶ。
振り向いた生島の額に、銃口が当てられた。
「使える管制官を2人選べ。殺しはしない」
呼ばれる前に、主任の山本裕典と星野真緒が、部下を庇って前に出る。
「いいだろう。これを着けろ」
ガスマスクが投げられた。
戸惑う3人。
「早くしないと全員撃ち殺す!」
彼女は既にマスクを着けていた。
仕方なく装着する3人。
それを見て、数カ所へ丸いものを投げた。
床や壁に当たり割れる。
「うっ…なんだ?あぅ…」
次々と倒れる仲間達。
「何をしたの⁉️」
銃口を当てられたまま、生島が松川に迫る。
「ドッ!」
「うっ…」
腹を膝で蹴られ、うずくまる。
「おっと、お客様か。さすが早いな」
時間をセットした小型爆弾を。エレベーターに投げ込む。
階段へも、何かを複数ばら撒く様に投げた。
既に他の者は息絶えている。
サリンガス。
昨年警視庁が押収したものであった。
中和剤を入れた小瓶を、適当に投げつけて割り、少しの間待つ。
「もういいだろう。マスクを外せ」
自分も外した。
「さて…始めましょうか」
鋭い目で、ニヤリと笑った。
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