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〜令和島〜
モニターのカウントダウンが進む。
プラントエンジニアがタンカー内と必死で連絡を取ろうとするが、通じない。
草吹が理由を聞く。
「今プラントへは、タンカーからの原油が送られているんです。爆破されたら、配管を炎がタンカーまで伝わって、想像もできない規模の爆発が起きます❗️」
「タンカーには1人いるんでしょ?」
「はい、JAXAの技術者で、艦のシステム開発者である平泉結女がいますが、通信に反応しないんです」
「実は彼女の両親は、5年前の航空機事故で、亡くなっている。犯人の仲間かも知れない…」
船越技術部長が、辛そうに告げる。
「一番近い配管の閉鎖弁はどこに?」
「岸壁際に、ありますが…もう時間が!」
「だから早く教えて❗️」
「あそこのゲートの真下だが…」
「深さは?」
「15m程だが…梯子などはない」
「あのロープを!みんなで蓋を開けて。私が降りて閉めるから」
「そんなの無茶だ⁉️」
「あと3分よ、悩んでる暇はない!私は元CIAで、そうゆうの慣れてるから、任せて。早く❗️」
「わ…分かった、皆んなゲートの蓋を開けろ!」
草吹の体に異常があるのは、見れば分かる。
しかし、ロープで降りるなど、他に出来る者はいない。
ロープを丈夫な鉄骨に結び、開けたゲートへ投げ込む。
細いLEDライトを咥え、ロープを脚から腰に斜めに巻きつけ、手袋を借りてロープを掴んだ。
「皆んなは出来るだけここから離れて!」
「バカな、君を引き上げないと❗️」
「私は自分で登れるので、心配はいりません」
確かに登れるが、15mの深さである。
弱った体でなくても、間に合うはずはない。
「時間が無いから、行くわ!」
躊躇せず、真っ暗な穴へと足から身を投じ、器用に巻きつけたロープを緩めながら、降りて行く草吹。
「No.1の大きなバルブだ、気をつけて!我々は彼らを連れて、シェルターへ!」
「彼女を残して逃げるんですか⁉️」
「爆発したら炎が油管を伝って、2分もせずにここに来る。彼女は、脱出が間に合わないことを知ってて行ったんだ。それを無駄にするな!」
「そんな…」
「恨むなら俺を恨めばいい。しかし、他にできる者はいないし、タンカーへの引火は、絶対に止めないといけない。彼女を信じるしかない…行くぞ❗️」
船越とて辛いのは当たり前である。
しかし、現場の責任者として、皆んなを守る必要があった。
それしか無いと皆理解した。
要人達と双葉を連れ、羽戸山を担架で運ぶ。
「やるね、元CIA…か」
艦内の平泉が、システム操作を始めた。
避難する彼等の後ろで、OIL ARK 号の姿が消えた。
〜地下15m〜
配管通路は意外に広く、所々に照明があった。
降りるのは数秒で出来た。
「まさか、こんなとこで死ぬとはね」
独り言を呟きながらも、自分には相応しく、十分な死に方だと思っていた。
「No.1のバルブ…ってこれ⁉️ …でかい」
油管は直径2m。
通常は自動制御の閉鎖弁。
システムロックされた今、手動で回すしかない。
壁を足で蹴り、全身の力で重いバルブを回す。
身体中に激痛が走る。
(これ以上モルヒネ打つと、正気を失う。後1分か…間に合うか?)
「クソっ❗️ 」
ひたすら回すしか無いが、簡単には回らない。
(間に合ってくれよ)
〜地上〜
モニターのカウントダウンが、10秒を切った。
シェルターの中で、放送されている映像を見ている皆んな。
そして…0に。
「ズドドーン💥💥❗️」
「ドドーン💥💥」
プラントに仕掛けられた爆弾が、次々と爆発し、第一タンクにも凄まじい爆炎が上がる。
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