【1】Moment 〜瞬〜

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〜東京台場〜 エレベーターを出る戸澤公紀(こざわきみのり)。 「ひでぇなコイツは!」 スマホを見ながら刑事課フロアに入る。 地上30階の警視庁凶悪犯罪対策本部。 あらゆる部署のエキスパートを集めた、警視庁の特殊本部である。 「なんだ、皆んなも見てんのか。監視カメラなんかより、動画投稿サイトの方がいいぜ」 昴が直ぐに切り替える。 「すごい…既にフォロワーが10万超えてる」 「感心してる場合じゃないわよ❗️戸澤、ネットオタクは捕まえたの?」 「咲さん、オタクじゃなくて、今や下手な芸能人より有名なチューバーよ」 違法な現場や、犯罪映像を投稿する、フォロワー数億越えの通称Guard(ガード)(監視人)。 「空振りだった。ヤツらのネットワークは、警察にも通じてんじゃねぇか?」 「元公安のエースがよく言うわね」 「元機密秘書に言われたくねぇなぁ」 「戸澤、土屋君。夫婦喧嘩は家でやる様に!」 富士本も、2人が(じゃ)れ合っていることぐらい分かっている。 「これじゃ、今夜の『スカイダイバー』はなしかな…」 「昴、スカイダイバーって、この前霞ヶ関の警視庁ビルから飛んだ奴か?」 夢川翔(ゆめかわしょう)。 通称『ムササビスーツ』とも呼ばれる進化したウィングスーツで、主に夜空を滑空しながら夜景を投稿する人気スターである。 その素顔は、未だ知られていない。 「あっ!やってますやってます❣️」 昴がタブレットを見せる。 「でもこれは編集してあるから、生配信じゃないですね。珍しい」 「さすがに警視庁本部が頭に来て警戒してるだろうから、暫く生は無理だろう」 戸澤が楽しそうに言う。 「ですよね…これは東京ドームだから、ドームホテルの屋上からですね」 東京ドームホテル。 高さ155m、地上43階の超高層ホテルである。 「ん?」 「どうしました、咲さん?」 そう尋ねた土屋も感じていた。 「ん〜何でもないわ。気のせいね」 気になりつつも、それより事故が心配である。 「しかしこの動画、正に決定的瞬間ですね」 昴が事故現場の録画映像を繰り返し映す。 再生回数は、もう10億回を超えていた。 「空撮ってことは、ドローンだな。運がいい…ってのは、不謹慎か💦」 土屋の顔色を伺う戸澤。 改めて、悲惨な事故映像に、言葉を無くして(たたず)む。
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