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〜事故現場〜
大量のガソリンが、巻き込まれた車に引火し、地獄絵図となっていた。
消防隊が各署から集まり、懸命な消火と救助活動が続いている。
外壁が破れ、崩れた首都高。
その下で、脱線した電車車両が散乱している。
更にその下では、信号待ちしていた20台程の車が埋もれていた。
通過しようとした高級車を、淳一が停める。
運転席の窓が半分開いた。
「すみませんが、あちらへ迂回してください」
「全く…急げ!」
広い後部座席からの呟き。
車が切り返し、迂回路へ向かう。
「昴、調べてくれ…」
車のナンバーを告げる淳一。
(この惨状を前にそれか?)
紗夜は炎を避けて、瓦礫に埋まった生存者を捜索していた。
声に集中する。
「こっちです。ここに生存者が」
車はない場所を指し示す紗夜。
若い警官が3人で瓦礫をどかす。
「誰かいますか?いたら返事を!」
返事はない。
「早く❗️私は救急隊を呼んできます」
駆けていく紗夜。
半信半疑でペースを上げる警官達。
すると…
「誰かいます❗️」
更に瓦礫をどかすと、腕が見え、触れると指が動いた。
「生きてる…急げ❗️」
救急隊が担架を持って来た時には、上半身が現れていた。
直ぐに処置にあたる隊員。
「聞こえたら手を握って下さい」
隊員の手を、グッと握る被害者。
「20代男性、頭部に外傷。意識あり、脈拍弱く…腹部内出血の恐れあり」
「了解、新宿メディカルセンターへ搬送してください」
警官も手伝い、担架に乗せる。
「ありがとうございます」
礼を言い、運んで行く隊員。
「本当にいましたね」
「ああ…紗夜刑事の噂は本当なんだ」
「こっちです、早く来て❗️」
別の生存者を見つけ、紗夜が叫ぶ。
「今行きます❗️」
疑念がなくなり、急ぐ警官達。
その時、また微かな命を感じた紗夜。
炎🔥が近い場所で、埋まっている車へ走る。
「危険です❗️」
消防士が紗夜を止めた。
「でも、まだ生存者が!」
焦る紗夜の目の前。
「ドドーン💥❗️」
引火した車が爆発した。
隊員が紗夜を庇う。
「ガンッ❗️」
飛んで来た瓦礫がヘルメットに当たる。
「大丈夫ですか?」
「ええ…ありがとうございます、貴方は?」
(異常な意識を感じた紗夜)
「大丈夫…で…す」
言い終えると同時に、意識を無くす彼。
背中に瓦礫の中にあった鉄棒が刺さっていた。
「誰かー❗️」
抱きとめて叫ぶ紗夜。
(誰か…)
誘発する爆発に、難航する消化と救助活動。
呆然とする紗夜の腕の中。
彼の重みが増した…。
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