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〜新宿区信濃町〜
5分前。
比較的空いている首都高速4号新宿線。
並走する中央本線の信濃町駅に、列車が入って来た。
駅の横で首都高速は、交差する外苑東通り319号線をくぐるかたちになる。
引っ越しサービスの大型トラックが、ライトを付けて入る瞬間。
後方からのバイクがすり抜けて行った。
「あっぶねぇなぁ…ったく!」
ふと、後方車がパッシングするのに気付く。
(俺に言ってもしょうが
そこまでであった。
「ヅドッガーン💥💥❗️」
トラックを中心に大規模な爆発が起き、対向車線の壁をも貫いた。
「ドムッ…ドドーン💥❗️」
鈍く重たい音と共に、319号線の高架が一瞬膨れ上がり、次に爆炎が高架を車もろとも吹き飛ばした。
電車のドアが開いた瞬間。
重い爆音が響き、衝撃で壁や天井パネルなどが崩れていく。
パニックに陥った人々が、叫びながら我先にと、改札へ殺到する。
その先に、改札を抜けたばかりの、園児達の一団がいた。
驚き泣き出す園児達。
向かって来る群衆に絶望する若い引率者。
その時。
走ってきた1人が、改札を踏み台にして園児達を飛び越した。
着地とほぼ同時。
「バンバンバン❗️」
いきなり拳銃を壁に3発撃つ。
「落ち着けーッ❗️」
銃声と男の圧倒的な威圧感に、パニックがピタリと収まる。
「ちょっと…ごめんね〜通してね〜」
園児を掻き分けて、専属ドライバーの原田岬が現れた。
「神さんっ…全くも〜無茶苦茶な💦」
関東一帯を束ねるヤクザ、飛鳥組。
その組長、飛鳥神である。
妻の妊娠をきっかけに堅気になり、駅構内に店をオープンさせた元組員へ、祝いを持って来たところで、事故に遭遇した。
「仕方ねぇだろうが、こうでもしなけりゃアイツらは…」
「ありがとうございました。助かりました」
涙目で頭を下げる彼女。
力が抜けてへたり込むのを、咄嗟に神が抱きとめる。
「シッカリしろ!早くガキ…あ、いや💦早く子供達を外へ。おい原田、お前も手伝ってやれ」
そう言って、群衆へ振り向く。
「ここは安全だ…たぶんな💧…とにかく落ち着いてちゃんと金払って出て行け」
素直に従う皆んな。
新宿で飛鳥神を知らない者は少ない。
ほぼ全員が出るのを見届けた頃。
警官が駆けつけて来た。
「銃を置いて手を頭に❗️」
「銃?そんなもん知らねぇぜ」
スーツを広げて見せる神。
銃は原田に渡していた。
「だよな、日向さん?」
「あ💦ええ、彼のおかげで、無事に皆さん避難できて、大変助かった次第で…はい💦」
駅長が神に合わせる。
「しかし…まぁとりあえず、署で話を聞かせてもらうか」
(焦りに困惑…迷い…逃避、迷惑?)
「神さん、お待たせ!」
到着した紗夜が、それぞれの心理を読み、対処を図る。
「警視庁刑事課の宮本紗夜です。彼は心配いらないから、あなたたちは救助を手伝ってください」
「は、はい❗️失礼しました💦」
慌てて駆けて行く警官2人。
「よう、久しぶりだな紗夜さんに豊ぉ…山?」
「川だ、川❗豊川だ️💧」
「おっと違ったか、悪ィ悪ィ。しかし、また派手にやらかしたな。今、組の者呼んで、救助を手伝わせてるが…」
「こんなとこで銃を撃つなんて、信じらんないわ!豊や…あ〜もう❗️豊川さんお願い」
「珍しく…焦ってんな」
硝煙の匂い。
盲目であった頃に磨かれた、目以外の感覚。
「ただの事故じゃねぇってことか」
紗夜がスマホを見せる。
事故の最初から最後までが、動画で投稿されていた。
「マジか…この高さってことは」
「ドローンだな。済んだぜ3つ…でいいな?」
掌を差し出して見せる豊川。
まだ少し熱い弾の薬莢が3つ。
「サンキュー。アンタもいい奴だな」
「ほざくな。ヤクザに貸しがあるってのは、役に立ちそうだからな」
今は笑んでる時ではない。
深刻な目で表へと向かう3人であった。
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