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【1】Moment 〜瞬〜
〜千代田区飯田橋〜
夜風が気持ちいい。
巨大なルーフを開いた東京ドームの灯り。
霞ヶ関方面の夜景も美しい。
ホテル メトロポリタンの屋上に立つ彼女。
JR中央線・地下鉄東西線・有楽町線・南北線・都営地下鉄大江戸線・三田線と、2駅6路線が近い地上では、沢山の人々が動いている。
10年ぶりに帰国して一月。
言葉少なく、されど騒がしい東京。
(東京もD.C.も変わりなし…か)
パトカーの音が懐かしく聞こえる。
その時、後方のドアが開いた。
「落ち着いて下さい。私は警視庁刑事課の宮本と言います。貴女のお名前は?」
「早まるんじゃない!まだ若いんだ、死んでもいいことなんて何〜にもないぞ」
「フッ」
背を向けたまま軽く笑うのが分かった。
(違う…?)
「元気な刑事さん。死んだことあるの?」
「えっ?えっと💬それは…あれだ、死にかけた時に…何となく分かったん…だよな、紗夜?」
「知らないわよ💦」
「夫婦で刑事なんて、珍しい…いや、羨ましい…かな」
霞ヶ関の本庁から帰る途中、自殺の通報が入り、丁度近くにいた2人…と言うわけである。
「…ん?」
少し踏み出し、暗闇に目を凝らす彼女。
ヒールの踵が屋上の縁にかかる。
「待て待て❗️」
焦る宮本淳一。
(やはり…違う)
心理捜査官の紗夜には読心能力があった。
夜風に靡く髪。
鋭い瞳は、何かを見ていた。
(淳、彼女は自殺する気なんてないわ)
淳一の頭に伝え、ホッとしつつ疑念が湧く。
(なんて閑かな心…何者?)
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