第10話 悩みを断ち切る「忘れてE錠」

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第10話 悩みを断ち切る「忘れてE錠」

 ♬闇ネット、闇ネット、闇のおぞまし屋本舗♬  「ああ、やらかしたぁ~。時間よ、戻ってくれ。ああ、気分が滅入る。消し去りたいあの時を。イジメられて死にたい…なんて思う事がよくありますよねぇ。本当に辛い時間です。そこで、あなたの悩みを一発で解消する画期的な商品がこれ、「忘れていE錠」です。嫌な事、忘れたいことが起こった30分以内にこの錠剤を飲めば、1時間以内の記憶が消え去ります。体調次第では3時間前にも対応します、知らんけど、なんてね。弊社の検証では、3時間前程になると、斑記憶が残る事もありますから、服用は必要な時にお早めに、をお勧めします。では、この薬の効果を確かめて頂くために、今日はゲストをお呼びしています、それでは、どうぞ」  MCの呼びかけにアシスタントディレクターが笑顔で、商品開発部長の背中を押しながらフレームインしてきた。  「ご紹介します、弊社の商品開発部長です」  効果音:拍手  「この番組をご覧いただいている方なら、もうご存じのことだと思いますが、前回見逃した方にご紹介します。彼は、前回、当番組で放送事故をやらかした張本人です」  「えええっ、何、言ってんだ…、放送事故?何のことだ?」  「ね。このように彼は自分が犯したことを一切、覚えていません」  「おいおい、さっきから何を…。どうして、私がここに…」  「では、商品開発部長、有難うございました」  効果音:拍手  商品開発部長がアシスタントディレクターに連れられ、スタジオを出て行ったのを確認するとVTRを流された。  「このVTRは、先ほどの商品開発部長が、薬を飲んでから効果が表れるまでの様子を編集したものです。右上の時間経緯と一緒にご覧ください」    前回、暴走翻訳機の模様が、商品開発部長の動きを中心に画像が流された。薬品開発部長が商品開発部長に薬を服用させた30分後、商品開発部長に変化が見られた。  「部長、部長、どうしたんですか?」  「急に…眠気が…襲って…」  「部長、部長」  心配する部下を尻目に商品開発部長は、寝息を掻き始めていた。  「余程、疲れたんだな」  部下は、彼を椅子に座らせ、仮眠室から毛布を持ち出し、彼の背中に「ごゆっくり」と声を掛け、立ち去った。  放送事故が開発費の回収に役立ったと周りが歓喜の声を上げている最中、彼は目覚めた。  「お目覚めですか」  「う、うん、寝ていたのか…、でもどうして?」  「部長、これで首が繋がりましたね」  「うん?何を言っているんだ」  「まぁまぁ、とぼけちゃって」  「確か…あれ?思い出せない…」    寝とぼけている彼に「良かったですね」と握手を求めてくる者や拍手をおくる者が現れ、戸惑っている様子が映し出され、VTRは終わった。  「どうです、これが、忘れたE錠の効き目です。信じるか信じないかはご自由に。少なくても彼は、この薬で嫌な失敗を記憶から消し去り、切り抜けた後の事だけを覚えているのです。注意点はひとつだけ。過剰摂取するオーバードーズは厳禁です。実例はありませんが、浦島太郎どころか赤ちゃんの頭脳に戻るか死が待ち受けているかも知れません。繰り返します、絶対、オーバードーズはしないでください。上手く服用すれば、嫌な思いをせずに済む、それがこの薬のいい処ですから。大きな声では言えませんが、犯罪を犯してしまったら、この薬を即座に服用。1時間前の記憶がなくなりますから取調時についうっかり自白してしまうこともなく、上手くいけば犯罪を犯したことさへ覚えていないかも知れません。これなら嘘発見器も怖くありませんね。  では、《忘れてE錠》のご紹介です。服用は一回1錠で1梱包6錠でお届け致します。通常価格は、6.000円。ですが、放送30分後までに契約された方のみ50%引きのなんと3.000円となります。さらにさらに、今から犯罪を犯す方にはさらに割り引されて1.500円でお届けします。送料は別途、返品不可の代金引換で本人確認をさせて頂いたのちにお渡し致します。くれぐれも悪用はお控えください。ご注文は、フリーダイヤル0120-@840-4242まで。オペレーターを増やしてご注文をお待ちしております」
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