境界線を薄くしていく

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『あの、』    慌てて送信ボタンを押してしまって、句点で言葉は送信されてしまった。日奈子はすぐさま続きの言葉を綴り、送信ボタンを押した。   『久しぶりに、中学の復習も兼ねて勉強を見てもらいたい』    すると、返事は秒で返ってきた。   『本当に? じゃぁ、五日後、次の土曜日13時以降はどう?』  日奈子は頭の中でスケジュールを思い返し、返事を打つ。  心臓が早鐘を打ち出して、文字を打つ指が震え始める。   『わたしも、その日は予定ないよ』 『よかった。場所は、うちでいい?』 『はい。大丈夫』  すぐ返ってくるメッセージに、日奈子もすぐさまメッセージを送った。  また、返事はすぐに返ってくる。   『教科書とか参考書とか、無理のない範囲で持っておいで。詳しいことは直前になって決めていこう』 『はい♪ いいお返事ありがとう! 楽しみにしてるね♪』 『こちらこそ、日奈子に会えるのを楽しみに仕事頑張るよ』 『わたしも学校、がんばる。おやすみなさい』 『おやすみ』    と、いう文章と、かわいらしいキャラクターが布団に入ったスタンプで会話が締めくくられた。    日奈子は会話をスクロールして、遊馬からのメッセージを読み込む。  嘘じゃない?  夢じゃない?    いつかご、どようび、じゅうさんじいこう。  本当だ。  会う約束……。   「……約束、出来ちゃった……!」    スマートフォンを胸元にギュッと引き寄せる。    まだどきどきしてる。  また、遊馬くんに会える。  勇気を出して、よかった。    日奈子は、この二年の間に引きに引いた『引かなくてもよかった境界線』が薄くなるのを感じていた。  この約束があれば、今週の学校も頑張れそうだ。  今日はもう遅いから、明日、琥珀に教えよう。  今度の土曜日、わたし、勇気を出して遊馬くんと会う約束したよって。
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