7人が本棚に入れています
本棚に追加
追悼04 教員への不審
須垣担任は悩んでいた。兼昆敬校長に忖度し、名嘉山健司副校長から「校長が定年になるまで問題をおこすな、おこせば責任を取らせる」と言われており、問題を発覚させれば自分の処遇が悪化することを懸念して、後先を考えず、あろうことか桜子から聞いた当事者を校内放送で呼び出し、早期終息を図り、事の次第を問い質す行動に出てしまう。
難しい問題ではあるが、被害者から事情を聴き、悟られても決して申告者が被害者であると断定せず、噂話や親御さんからの懸念として、出来る限り内密行う必要があった。この際、校長・副校長・関わる学年責任者や他の教員、保護者会などを巻き込み、真相究明中に更なる悪化した事態を招かないように注意すべきだった。
対応したのは名嘉山健司副校長と担任の須垣明歩だった。教員たちの質問には中野美帆が不貞腐れながら答えた。他の者は美帆の発言に笑みを浮かべて頷くだけだった。
「単刀直入に聞くが、イジメを行ったのか?」
「知らな~い」
「自慰行為を強要され、写真を撮られた、との訴えがあるが?」
「そんなの知らな~い」
「写真を見たが?」
「あっ、そう…。あっ、あれね、あれは、桜子が自ら進んでやったことで、私たちは魅せられていただけぇ、そうそう、悪ふざけで~す」
「そうか、悪ふざけか。それなら問題ないな。あはははは」
「…」
「じゃぁ、下がってよし。あっ、その画像はまだあるのか」
「ある。欲しい?」
「送信してくれるか」
「いいよ」
「お~」
悪ふざけでの行為であり、桜子本人が自ら進んでやった、と言うとんでもない言い訳を事なかれ主義を優先させ、名嘉山健司副校長は、鵜呑みにした。
桜子の母・静江は、落ち込み、話す機会も与えない桜子の対応に苦慮していた。その時、テーブルに桜子が忘れていた携帯が鳴った。静江は、迷ったがそのメールを開けてみた。そこには娘のあわれもない姿があった。静江は半狂乱になり、翌日、担任のもとを訪れた。須垣担任は、取り乱すも必死で冷静を保つ静江に対して、加害者の行動に注視し、対応するの一点張りで埒が明かなかった。静江は悶々とした気持ちで帰宅した。桜子は相変わらず、部屋に閉じ籠ったままだった。
それから桜子は、学校へ通う日数が目立って減っていった。その間も美帆たちから呼び出しや誹謗中傷のメールが頻繁に届いていた。しかし、幾ら義務教育とは言え、高校に進学するためには出席日数の問題が桜子に重くのしかかっていた。
最初のコメントを投稿しよう!