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相変わらずの派手派手しい姿を、灰色の背広に包んで、まるで英國紳士だ。
「お久しぶりです。どうしました?」
長瀬はニヤリと笑った。大学時代の記憶にはない、長瀬らしからぬ笑いであった。
「昨日、偶然会った奴から君が面白いことをしていると聞いてね」
そこで、今まで無視していた少年に視線だけを向けた。
少年は尚も、握り飯を貪っていた。
「あぁ、そうですよ。最近は社会貢献に目覚めましてね」
「へぇ、社会貢献」
厭な感じの言い方だった。
真面目なだけの男だったはずだ。こんな厭な言い方や表情を見せたことなどなかった。
警戒しつつも私は、長瀬の変わりように興味を示した。
「長瀬さんは相変わらず弁護士を?」
あぁ。と、溜息交じりに答える。
「どうしたんです? お疲れの様子だ」
「弁護士ってのはどうにも、保守的な連中の集まりでね。
なりたての頃はそれなりに野心ってもんを持ってたんだが……この見てくれが邪魔をして、同僚も客もまともに相手をしてくれやしなくてね」
成程。と思った。だからこんなにやさぐれているのか。と。
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