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一人の汚らしい少年を見つけた。
ボロボロになった着物を身に着け、土だらけの足を、今にも鼻緒が切れそうな草履に突っ込んでいる。
「君」
少年は無言で私を見た。
いや、睨み付けた。
気位の高そうな表情。落ちぶれた士族の子かもしれない。
「お父さんやお母さんはどうしたのだ?」
睨み付けたまま、少年は口を利こうとはしない。
「お腹空いてないか?」
流石に空腹には勝てなかったらしく、小さく頷いた。
「うちにおいで。君のように身寄りのない子供達がいるんだ。ご飯もお風呂もある」
上目遣いに私を見ると、おずおずと近寄って来た。
少年の歩幅に合わせて歩く。
生意気そうな表情は相変わらずだが、それでも素直に付いてくる。
心の中でほくそ笑み乍ら屋敷に向かった。
私の屋敷は、とある没落華族の手放した洋館だった。広い敷地の中には、日本邸宅もあり、そちらでは保護した子供が過ごしている。
若き実業家として活躍しながら、社会貢献として親のない子供を保護し、自立させる。
私の名声は日毎高まっていた。
少年を洋館に招き入れ、清潔な洋服を持たせて風呂場に放り込む。
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