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「……」  あたしは携帯を片手に、かなり…悩んでた。 『動きがあったら連絡して。』  そう…言われてたからだ。  誰に…かと言うと…  (あずま) (えい)さん…  先月、音楽事務所『ビートランド』で大イベントが開催された。  あたしは、そのチケットを東さんにもらって…観に行った。  そこで、紅美ちゃんの歌を聴いた。  キラキラしてる彼女を見て…憎しみが、どうでも良くなった。  …そりゃあ少しは…悔しかったけど…  会って話して…  紅美ちゃんには、海くんと向き合って欲しいって言った。  …うん。  これは、本心。  だって、気持ちを残すのは…辛いよ…  ピン  手に持ってた携帯から、少し高い音が鳴って。  あたしは少し背筋が伸びた。  え…え? 『朝子ちゃん、元気?あれからどうしてるかと思って』 「あ…」  あたしが悩んでるのを、見てたかのように。  東さんからのメール。  元々…あたしは携帯を持ってなかった。  狭い世界でしか生きてなかったあたしに、それは全然必要のない物で…  持ってる人達は特殊な人間。ぐらいに思ってたかもしれない。  だけど、一人暮らしをするにあたって…  両親からも兄からも、持っておけと言われた。  そんなわけで、携帯には登録件数が少ない。  だから当然…連絡も少ないわけで…  だからって言うわけじゃないけど…  東さんからのメール、ちょっと嬉しい。 『こんにちは。はい、元気です。実は一人暮らしを始めました。これから色々成長していきたいと思います。』  送信した後で、あっ。と思い出して。 『東さんも、お元気ですか?』  と、送った。  しばらく返信はなくて。  あたしは、すぐに返信があるものだと思ってた自分に苦笑いしながら、携帯をテーブルに置いた。  …さ、アイロンかけて…  ピン 「……」  その音を待ってる自分がいた。  本当は飛びつくようにして見たいクセに、わざとゆっくり携帯を手にする。 『朝子、元気?仕事は慣れた?落ち着いたらご飯行かない?それか、朝子んちで作ってくれてもいいよ^^』  …メールは、泉ちゃんからだった。  ちょっとガッカリしなが…ううん!!  ガッカリなんてしてない!!  あたしの事、心配してくれてるんだもん!! 『泉ちゃん、あたしは元気です。二階堂の皆さんは元気ですか?仕事は、何とかついていけてるよ。いつか、ご飯しようね。うちでも外でもいいよ^^』  送信。  ピン  泉ちゃんからの返信が来た。  早いなあ。  …と思ったら…  東さん。 『俺は元気。急で悪いけど、明日仕事何時まで?会えないかな。』  その文字を見て。  あたしは…顔が赤くなるのが分かった。
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