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「……」  だ…だめだ。  つけてるテレビを見てるつもりなのに…あたしは、ニヤけ顔が止まらなかった。  このテレビも、世間を知るためのって言うか…情報収集のために、思い切って買った。  二階堂にあるテレビは、ほぼニュースを見るための物で。  バラエティやドラマなんかがやってるの、見た事なかった。  あたし、そういうの少し…勉強した方がいいよね…  って、勝手に思って、買った。  だけど、長時間見るのは疲れる。  …習慣って、恐ろしい。  今日は…東さんとデートだった。  …デート…  最初はそう思わなかった。  ただ、会えない?って聞かれて…  何か話でもあるのかな…って思った。  だけど…  手を繋いで…抱きしめられて…  …キスされた。  それも…あたしの事、好きって…言ってくれて… 「あ…もう…」  あたしは膝を抱えたまま、ごろんと横になる。 「……」  好きって言われる事が…こんなに嬉しいなんて…  生まれて初めて、告白された。  何だか…ふわふわした気分…  あれから、東さんは… 「東さんなんて固いよ。映って呼んで。」 「えっ…そんな、呼び捨てなんて…無理です。」 「じゃ、みんな映ちゃんって呼ぶから、それでも。」 「…映…ち…映くん…でもいいですか?」 「…いいよ。それと、こないだはタメ口だったのに、何で今日は敬語?」 「えっ…あたし、そんな失礼を…?」 「失礼じゃないよ。タメ口でいーって。」  それから、ドライヴして…食事に行った。  東さ…映くんは…  あたしに色んな質問をして。  あたしが『あずき』の名前は出さずに、厨房で働いてるって言うと。 「いつか俺にも飯作ってくれる?」  って…  どこまでも、あたしを気持ちよくしてくれた。  だけど…  映くんがお会計をしてくれてる時に、外で待っててって言われて。  あたしが先に外に出てると…  あたしとすれ違った女性三人組が。 「…見た?顔の傷。隠せばいいのにね。」  お酒が入ってたのか、女性たちの声は大きかった。  あたしは…楽しい時間で、すっかり忘れてた傷の事に気付いて。  慌てて髪の毛で顔を隠した。  すると…いつの間にあたしの隣にいたのか… 「待たせてごめん。」  映くんが…あたしの肩を抱き寄せて。 「俺、この傷も含めてこの子を好きなんだよなー。」  女性たちに向かってそう言って…あたしの髪の毛を耳にかけて…  傷に…キスをした。 「何も問題ない。」 「…映くん…」 「堂々としてろ。」 「………うん。」  初めて…  気にしない。って…思えたかもしれない。  あたし…彼といたら…  強くなれるかな。  …変われるかな…。
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