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第一話
伊織 夢夏、15歳。
生まれて初めてロックフェスに参戦! 会場の熱気でテンションもぶちアゲな感じ!
初めてこういうフェスとライブを見るから、まだ始まっても無いのに、胸がドキドキしてる。太陽がさんさん照り付けてるから、父ちゃんが熱中症予防にって経口保水液を作ってくれた。母ちゃんは塩飴をくれた。親から離れてこういうところに来るのって、すっごいオトナって感じがする!
もうおれも一人前の男だー! って言いたくなったけど、同じように会場入りする人はビール飲んでるし、チューハイを飲んでる人もいる。おれもアルコールを解禁されたら、絶対飲むんだ! 父ちゃんよりも酒が強い自信があるっ!
フェス会場は芝生が広がっていて、ポールでブロック分けがされていた。大音量で大好きなバンドの音楽が流れてて、それだけでもうやばい。超たのしい!
出店もいっぱいあるし、お腹が空いたらあそこで焼きそばとか食べたい!
おれはチケットに書いてある案内に従って、Bエリアに向かった。想像していたよりもステージが近い。すごい! 母ちゃんが昔アイドルのコンサートに行ったときは、小指の先ぐらいにしか見えなかったって言ってたから、母ちゃんには勝った気がする!
ワクワクしながらフェスの始まりを待つ。こうやって待ってる時間も楽しい。おれは待つこともスマートにできるオトナ! かっこいい男!
周りに人が集まってくる。みんな推してるバンドのグッズを身に着けていた。おれもTシャツ買ってみたいなぁ。お小遣いで買えるかなぁ。スマホで決済しちゃ駄目かな? 母ちゃんにゲンコツ落とされちゃうかな……。怖いや。
どのバンドのグッズってのがすぐにわかるから、デザイナーさんってほんとすごいや。でも、たまにわからないグッズもある。桃に天使の羽が組み合わさったデザインのプリントTシャツを着てる人をちらほら見かける。あっちは中華シャツっぽいデザインの人だ。桃が関係するバンドっていたっけ?
フェスの開始を報せる花火が上がる。火薬の匂いが風に乗ってくる。煙でちょっとむせた。涙出ちゃった。
トップバッターのバンドが登場する。会場の熱気は一気にテッペンまであがった。知らないバンドだけど、サビっぽいところで周りを真似して拳を突き上げる。会場の一体感が楽しい。すっごい楽しい。
次々にアーティストが出てきて、全然違う雰囲気のパフォーマンスをしていくし、煽ってくるスタイルも違うから、すっごい楽しい。すごい。こんなに人を熱狂させるなんてすごい!
おれもいつか、こんな風になりたいな!
次はどんなバンドだろうってドキドキしながら待っていたら、桃デザインのお兄さんが前に詰めてきて、おれの隣に来た。
さっき知ったんだけど、お目当てのバンドが来たら良い場所を譲るっていう暗黙のルールがあったみたい。おれは初めてってこともあって、なんだか許された。近くにいたコワモテのお兄さんが教えてくれたんだ。
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