第三話

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第三話

 たぉたぉちゃんグッズが届いたから、早速開封の儀!  アニメのグッズの時もやってるけど、開封動画撮ってるんだ。SNSのストーリーにあげるの楽しいし、インターネットで同じもの好きな人に出会えるのも嬉しい。  スマホをスタンドにセットしてから、録画開始! 「今日はね、この前のロックフェスでビビっときたアイドルのグッズが届いたから、開封します!」  まずは箱のガムテープにボールペンを突き刺して裂く。こうしたらカッターやハサミに比べてケガしたり中のものを傷つけないって父ちゃんが教えてくれたんだ。  箱を開いて、緩衝材と納品書をよける。個人情報が見えないようにしなきゃ、こわいこわい。 「じゃーん! たぉたぉちゃんのブラインドアクリルキーホルダーです! 何が当たるかな!」  おれは銀色の袋を開封する。  写真のアクキーじゃなくて、たぉたぉちゃんをイラスト化したアクキー。絵柄はどれも可愛かったから、どれが当たっても問題なし! 何が出てくるかドキドキしながら、厚紙の間に挟まったアクキーを引っ張り出した。 「あ、あれ? 一覧に載ってないや」  銀色の袋に全ての絵柄が載ってるんだけど、一個だけ『?』と書かれてシルエットだけのものがある。  シークレットだ! 「やった! シークレット当たったよ!」  たぉたぉちゃんがぬいぐるみを抱っこしてるようなデザインだった。そのぬいぐるみは動物じゃなくて、人の形。金髪で毛先に青いグラデーションが入ってる。  あ、さっきの配達員のお兄さんだ! たぉたぉちゃんのことを妹って言ってたから、きっとそうだ! 配達員のお兄さんのグッズゲットしちゃったや!  仲良し兄妹(きょうだい)って良いなぁ。おれも妹か弟が欲しいや。母ちゃんに言ったら頭にゲンコツ落とされたし、父ちゃんに言ったら「おれも年だからなぁ」って言われちゃった。  お次はブラインド缶バッジ。こっちも写真じゃなくてイラストのもの。アクキーとはデザインが全然違う。 「お次は、缶バッジ開けていくね!」  何が出るかな? 何が出るかな?  歌いながら開封して、厚紙に挟まれた缶バッジを取り出した。 「あ、こっちもシークレットだ!」  こんなにシークレットが当たることなんてあるんだ!  それにしても、仲良し兄妹なんだなぁ。自分のグッズにお兄さんを登場させるってすごいや。  後はボールペンやラバーバンドの紹介をして、動画を終わらせた。文字入れして、ストーリーに投稿して、おしまい!  もしかして、たぉたぉちゃんファンの間であのお兄さんって有名なのかな?  早速、SNSで検索してみた。そしたら、けっこうお兄さんの話題も上がってた。 『たぉたぉちゃんのお兄ちゃん大好きなところかわいいよねぇ』 『俺もたぉたぉちゃんのお兄ちゃんになりてぇ!』 『あれだけお兄さんの話をライブ中にするアイドルいないよ! お兄さん気になる!』 『フェスの物販にいたのたぉたぉちゃんのお兄ちゃんだよね!? アクキーシークレットのイラストまんまだった!」 『たぉたぉちゃんのお兄さんめっちゃ顔良すぎ! 一緒にアイドルしたら良いのに! 男だけど推せるわ!』  もしかして知らなかったのおれだけ!? ってくらいに情報が溢れ返ってた。  だって、おれ、たぉたぉちゃんのことをフェスで始めて知ったんだもん。これからいっぱいライブやサイン会や握手会に参加したら良いよね!  よし! まずは、ファンクラブの通販注文しちゃおっと。父ちゃんに許可もらえたし!
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