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確かに一度、心臓のバイパス手術をしたことがあるが、ペースメーカーは入ってないはずだ。そんな事を考えていたら、社長はずんずんとラブホテルに向かって歩いて行く。
「え、マジか」
二人はフキの葉を差しながら五分ほど歩くと、古めかしいラブホテルの入り口に到着した。
「すみません。雨宿りさせて欲しいんですけど」
陰気くさい顔の女が興味なさそうに鍵を寄越した。この辺では良くあることなのかもしれない。薄茶けた壁に貼られた真新しいポスターには、家族での宿泊OKとデカデカと書いてある。カップル客が来ないのは、このプランのせいじゃないかと思ってしまう。
「今、サービス期間中だから、休憩も一泊も値段変わらないよ」
「は、はあ」
「あの、じゃあ二部屋」
「いい。一部屋で」
「社長、こんな所でケチらなくても」
二人で一部屋使うなんて嫌すぎる。
「経費が勿体ないだろう。お前はソファーで寝ろ」
領収書を見た経理担当が、どんな反応をするのか考えただけでゾッとする。身震いする俺を置いて、社長はむんずと鍵を掴んでさっさと部屋へ向かう。ため息をついて、とぼとぼとついて行く。
「おお、広いな」
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