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「今日の新歓、いつもと違う店なんだって。」
「大地さんが予約してくれたらしい。」
「大地さん、お店に詳しいもんねぇ。」
午後4時の食堂で、講義も終わって、私はサークルの同学年の仲間4人と丸テーブルを囲んで、購買で買ったプリンを食べていた。今日は夜からサークルの新歓があるので、それまでここで時間潰しをしていた。
大地さん、溝端大地(ミゾバタ ダイチ)さんは工学部所属の3年の先輩だ。彼も一浪していて、年齢的には私と同じ。それもあってか何かよく絡んでくる。でも、絡みがちょっと面倒臭い人で、苦手だったりもする。
「よお!みんなそろってるじゃん!」
話をすればだ。大地さんが向こうから手を挙げてやって来る。彼は中高とバトミントンをやっていたそうで、うちのサークルでも群を抜いて上手い。その上、背も高いし顔もアスリート系の爽やかで、サークル内でもモテ男子扱いを受けている。
「お疲れ様です!」
隣に座る理亜の声がパッと明るくなる。理亜はみんなにはまだ言っていないが、この3月に大地さんと付き合ったのだ。
「お疲れ。美織、何食ってんの?」
「プリンです。購買の。」
なのに、なぜまず私に絡む?こう言うところがあまり好きではない。
「いいなぁ。俺もお腹減った。」
「あ、じゃあ、私、何か買ってきます。」
理亜が財布を片手に席を立ったので、「サーンキュ。」と言いながら、大地さんは私の横に腰を下ろした。
理亜は尽くしすぎだと思う。付き合ったきっかけが「理亜ちゃんが俺を好きって言ってくれるなら、付き合ってもいいよ。」だったから、仕方ないのかもしれないけど。
「新歓、みんな来るよね?」
「行きます!」
「今年は20人近く入ったんですよね?」
大地さんを中心に咲く話は上の空で、そろそろ行かなきゃと思っていた。河邑さんに会いに行かないと。好きって言うって決めたのだから。
「私、ちょっと用事があるから行くね。あ、新歓には参加します。」
一旦、会話が途切れたタイミングで、前半は友達に後半は大地さんに言って席を立ったら、すぐ様、大地さんが私の手を取った。
「何?用事って?」
何すか、その視線。せっかく俺がいるのになんて顔されましても。
「みお姉は片思いの運命の人に会いに行くんですよ。」
「ちょっと!彩奈ちゃん!」
彩奈ちゃん、斉藤彩奈(サイトウ アヤナ)は面白い子なのだが、言って欲しくないことを、平気でぽろっと口にする癖がある。
「片思い?美織、好きなやついるの?」
「た、大地さんには関係ありません。」
「関係なくても気になるし。」
理亜が戻って来たのに、大地さんは手を離してくれなくて、理亜が「何で?」って顔をしていて……
「離してください。手。」
大地さんの手を振り解いたら、彼の顔が一瞬にして曇ったのは言うまでもない。
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