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「いた。」
……この声……
大地さんがとっていた手とは反対側の腕をとられる。「あっ!」って顔を彩奈ちゃんがしている。
「探しました。正木美織さん。」
いつもと同じスーツ姿。大地さんが舐めるように見ていても怯むことなどない。
「今日の午後からの紛争問題の講義受けられましたよね?」
「はい。」
講義?受けたけど……
「あなたの学生証のICチップが認証機器に認識されていなくて、今日の講義を欠席したことになっています。」
「ええっ!?」
紛争問題の講義は必須講義なのだが、一回でも休んだら単位がもらえなくなると言われている。今日の講義でも、いつもと同じように学生証を入口にある認証機器に通して出席登録したはずなのに。
「と言うわけで、ちょっと来てください。」
河邑さんが私の手を取ったまま歩き出す。細くて長い指が私の手を握りしめる。
「美織!」
理亜に呼ばれたので、「後で直接お店に行く。」とだけ伝えておいた。
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