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「美織、おはよう!」
駅のホームにまた新しい電車が乗り込んできて、何人かの学生が降りる中に、友人の伊藤理亜(イトウ リア)の姿があった。
理亜とは学部もサークルも同じで、学校でも一番長く同じ時間を過ごしている友人だった。ちなみに学部は社会学部、サークルはバドミントンサークルに所属している。サークルはバドミントンは未経験だったが、理亜に誘われて入部した。たまにマスターズの大会に出ることもあるが、普段は和気藹々とバドミントンを楽しんでいるサークルだ。
「おはよう。」
「今日、暑いねー!あー、美織の今日の服、可愛い!」
オフショルダーのペールピンクのブラウスをジーパンに合わせている。一番上の姉、有栖(アリス)ちゃんがアパレル店員なので、よく自分にも服を買ってくれたり、今年の流行の情報を教えてくれたりするため、私は勝手にけっこうお洒落な大学生に周りから見られている。当の本人は、お洒落への関心は然程高くないのだが。
「でも、今日の美織、ちょっといつもと違う。そのリップ、新しいでしょ?」
「うん。奮発してデパートのコスメ買ったの。」
理亜は自分とは反対で服やコスメへの関心が高い。下ろしていると、髪も肩の下あたりの巻き髪なのだがいつもヘアアレンジをしている。メイクの手を抜くこともないし、服装も花柄のワンピースとか膝上のミニスカートをサクッと着てしまう。
私はどちらかと言うと、カジュアルな方が好きで、Tシャツにロング丈のスカートとかが本当は一番落ち着く。髪も今は外はねのボブヘアーで、今しかできないとオレンジベージュで明るく染めている。
「今日、なんかあったっけ?」
首を傾げる理亜。今日はいつもと変わらない金曜日のはずだと言いたげに。
「何も。私以外は。」
「どういうこと?」
「好きですって言うことにした。」
「好きです……って、もしかして河邑さんに!?まだ好きだったの!?」
理亜にそう言われても仕方がない。私と河邑さんが出会ってもう半年以上が経とうとしている。
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