3.平凛の決意

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 是真は持っていた杖を片手で振りかぶり、「ぶん!」と振り下ろすと、ハゲメガネの目と目の間にピタリと止めてこう言った。 「お主か?孫娘を侮辱したうえ泣かせおったのは?岡野殿もいたぶったそうではないか。この場で潔く腹を切れい!」 と本気としか思えないような声で言った。 「お待ちになって下さーい!」 とそこに人混みをかき分け西森弁護士が入ってきた。 「私は岡野さんに選任された弁護士で西森と言いますが、少し話を聞いて頂けますか?」 とよく通るいい声でそう言った。たぶん、法廷でもこれくらいの声量を出しているのだろう。  「ウむ、申してみよ」 なぜか答えたのは是真さんだった…。 「はい、ありがとうございます。結論を言いますと、今回の事は市役所側の手落ちだったことがわかりました。  防犯カメラや受け付けた担当者の話で、婚姻届けは3月30日の午後10時過ぎに提出され、そして受理されていることを確認致しました。ただ、その書類は戸籍係まで届かずに、市役所内で紛失されています。  ただ今全力を挙げて探しておりますが、見つからなくてもその日時に(さかのぼ)って受理するとの確約を市長から頂いています」 西森弁護士はそう言うと封筒から紙を一枚取り出して、自分の頭の高さに掲げた。  ハゲメガネはその紙をじっと見た後、肩をガックリと落とした。体が一回り小さくなったみたいだ。 「もう私の出番はないようだね」 と威厳のある人物が言うと、ハゲメガネが、 「ほ…ほ…本部長!」 と叫んだ後、さらに小さくなった。ナメクジに塩をかけたような反応だ。  本部長は、 「元々ISDは本部長直属の部署なんです。他の部署が干渉するには、私の許可を得て下さい。今回の事は見逃すわけにはいかないので、ちゃんと文書で報告してもらいます。追って何らかの処分をしたいと思います」 と言うと(きびす)を返して退室した。 …数日後…  事の発端は平凛に告白した同級生のデブだと分った。そいつが平凛に振られた腹いせに、親になんとかしてくれと泣きついたらしい。  で、そのバカ親は県警本部のある部署の課長職で、今回の部署にチクって息子のウサを晴らそうとしたみたいだが、逆にそのバカ親が処分される形となったようだ。  あと警務部長が今回の弁護士費用をすべて持つと申し出てくれた。本部長へのゴマすり感もあったが、オレにとっては助かった。  今回の件は公にはされなかったものの、県警内では誰もが知ることとなり、そしてこんな言葉ができた。 ISDには手を出すな! 渚の街のモノクローム外伝 「平凛アナザーストーリー」⓻平凛のダンナ、逮捕さる? 終 あとがきは次のページで。
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