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是真は持っていた杖を片手で振りかぶり、「ぶん!」と振り下ろすと、ハゲメガネの目と目の間にピタリと止めてこう言った。
「お主か?孫娘を侮辱したうえ泣かせおったのは?岡野殿もいたぶったそうではないか。この場で潔く腹を切れい!」
と本気としか思えないような声で言った。
「お待ちになって下さーい!」
とそこに人混みをかき分け西森弁護士が入ってきた。
「私は岡野さんに選任された弁護士で西森と言いますが、少し話を聞いて頂けますか?」
とよく通るいい声でそう言った。たぶん、法廷でもこれくらいの声量を出しているのだろう。
「ウむ、申してみよ」
なぜか答えたのは是真さんだった…。
「はい、ありがとうございます。結論を言いますと、今回の事は市役所側の手落ちだったことがわかりました。
防犯カメラや受け付けた担当者の話で、婚姻届けは3月30日の午後10時過ぎに提出され、そして受理されていることを確認致しました。ただ、その書類は戸籍係まで届かずに、市役所内で紛失されています。
ただ今全力を挙げて探しておりますが、見つからなくてもその日時に遡って受理するとの確約を市長から頂いています」
西森弁護士はそう言うと封筒から紙を一枚取り出して、自分の頭の高さに掲げた。
ハゲメガネはその紙をじっと見た後、肩をガックリと落とした。体が一回り小さくなったみたいだ。
「もう私の出番はないようだね」
と威厳のある人物が言うと、ハゲメガネが、
「ほ…ほ…本部長!」
と叫んだ後、さらに小さくなった。ナメクジに塩をかけたような反応だ。
本部長は、
「元々ISDは本部長直属の部署なんです。他の部署が干渉するには、私の許可を得て下さい。今回の事は見逃すわけにはいかないので、ちゃんと文書で報告してもらいます。追って何らかの処分をしたいと思います」
と言うと踵を返して退室した。
…数日後…
事の発端は平凛に告白した同級生のデブだと分った。そいつが平凛に振られた腹いせに、親になんとかしてくれと泣きついたらしい。
で、そのバカ親は県警本部のある部署の課長職で、今回の部署にチクって息子のウサを晴らそうとしたみたいだが、逆にそのバカ親が処分される形となったようだ。
あと警務部長が今回の弁護士費用をすべて持つと申し出てくれた。本部長へのゴマすり感もあったが、オレにとっては助かった。
今回の件は公にはされなかったものの、県警内では誰もが知ることとなり、そしてこんな言葉ができた。
ISDには手を出すな!
渚の街のモノクローム外伝 「平凛アナザーストーリー」⓻平凛のダンナ、逮捕さる? 終
あとがきは次のページで。
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