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「よしっ!おわりっ」と、全問を写し終えたらしい美咲は、私のペンケースを意味もなく漁りながら言ってきた。
私はうしろを見ていた視線を元に戻す。
「確かに1軍に囲まれてもクール貫くスタンスとあのルックスはね、誰だって惹かれるよねぇ~」
美咲とは小学校3年生からの、いわゆる幼なじみみたいなもの。
だから今だって私のことを分かりきったように話してるんだろうけど。
残念ながら美咲さん、その考察は外れてますよーっと。
「それ、ちがうって否定したら信じる?」
「信じなぁ~い。だって青花って昔っからシャイで人に聞くわりには自分の好きな子を絶対教えないズルいとこあるもん」
「ははは、そうだっけ?」
だから美咲は、私が男子生徒に向ける珍しい視線=恋をしていると勝手に決めつけたらしいのだ。
好きなんじゃなく、私は彼という人に単純に興味がある。
だって相良 透架は私の知っている中で殺されていない人間だから。
ちゃんと生きている人間だから。
……なんてことを言ったところで話の通じる相手ではないと判断して、言うのはやめた。
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