きみは不思議な人

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「だれかこれ持ってくの手伝って~」 「そんなの体育係の仕事だろー!」 「あんたら助け合いって言葉しってる?」 「知りませ~んっ!」 ところ変わって体育の授業おわり。 体育係の女子ふたりが得点板やボール、ポールにネットにアンテナ、バレーボールの後片付けに回っていた。 こういうときに助ける人間はとくにいない。だってそれはいつものことだから。 もちろん名乗り出てわざわざ優しさを発揮するクラスメイトもいない。 だってそれは昼休み前だから。 「あっ、青花!ちょうどいいところに!これ手伝ってくんなーい?」 流れに沿って教室へ戻ろうとした私の足は、体育係である1軍女子の呼び掛けにピタリと止まる。 ちょうどいいところにってなに。 全然ちょうどよくない、クラスメイトはまだいっぱい居るのにどうして名指しなの。 「断ることは可能…?」 「不可能~!青花は優しいからそんなことしないもんねー?」 っていう、脅し。 ここで断ったなら“優しくない奴”というレッテルを貼られて、数日は根に持たれる。 だけど本人さえ能天気にしていれば、先生だって気にもしない。それは1軍女子だって同じだ。 そして私は、今日も自分を殺して笑う。
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