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そして青年が当てられた第三人間とは。 元はヒトとして生まれ、しかし最終的に人工知能を体内に埋め込んで改造することによってAIとして生きる存在のこと。 その決断ができる人間は、そんなテクノロジーが出来上がって間もないこの時代では少なかった。 理由としては第三人間に対する恐怖と軽蔑、不信感、ただそれだけではない。 彼は、第三人間となったヒトは───…特殊工作員として政府から扱われるのだ。 それでも“生きたい”、“生きてほしい”、そんなエゴで成り立っても許される世の中であった。 「手術は無事に成功しました。トーカくんにお会いになられますか?」 「はっ、はい…!」 「ですが、…やはりヒトであったときの記憶はありません」 「っ、」 覚悟はしていても、やはり親は親。 そこには微かな期待を募らせてしまっていた。 けれど現実も、また現実なのだ。 「…マニュアル通りにしか動けない、ロボットと思った方がいいでしょう」 「っ…、でも…トーカは生きています、生きてるんです、」 「…そう…ですね」 まずは名前を呼んであげて、筆を持たせてみましょうか───と、主治医の声は消えそうだった。 きみは水彩絵が得意だったんだ。 いつも絵の具を手にして、空や花を描いていた。
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