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きみは不思議な人
◇
この世界は常に、誰かが何かに殺されているものだと私は思う。
事故、災害、病気───それを出してしまえばキリが無いけれど、私が言っているのはそこじゃなく。
「わっ…!……あ、」
「あっ、わりー!おいお前ら待てって…!」
ランドセルを背負った女の子と、中学生集団の1人がどんっとぶつかった。
たとえ女の子が手にしていた袋が地面に落ちたとしても「わりー」だけで返して、気にも留めない少年たち。
……あれ、ケーキだ。
駅前からまっすぐ歩いたところで起きた小さな事故だとしても、その子からすれば大きな悲しみを生んでしまった瞬間。
「…くずれちゃってる、」
中身を確認した女の子は、くしゃっと小さく顔を歪ませた。
そんなものをたまたま後ろを歩いていた私はどうしたらいいものかと、迷ってしまう。
新しいケーキを買ってあげるべき…?
それともまずは優しく声をかけてあげる…?
「っ、お母さぁぁんっ」
「え、なに、どーしたの、うそ!転んじゃった?」
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