卒業

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 あの日から、毎日ではないけれど朝の教室で一緒になることが増えていた。  話すこともあれば、「おはよう」と挨拶をしてそれぞれの席で過ごすこともある。  相変わらずクラスの人気者ということに変わりはないから、クラスの奴らがやって来れば、あっという間に高城の周りは人でいっぱいになってしまう。  朝のゆったりした時間も悪くないけれど、俺はみんなと過ごしている高城を見るのも嫌いじゃなかった。  楽しそうに大きな目をくしゃりと崩して笑う顔が好きだからだ。  ある日の朝、学校に来る途中からいきなり降り始めた雨に慌てて鞄の中に常備している折り畳み傘をさし、何とか濡れるのを最小限に抑えることが出来て教室へとたどり着いた。  席に座ってしばらくすると、勢いよく教室のドアが開く。 「おはよう、岡崎」 「おは……って、高城、びしょ濡れじゃん」 「だって、いきなり降って来たから」 「タオルは?」 「部活で使うやつがカバンに……」  椅子から立ち上がると高城へ近づいていき、カバンを受け取り、中からタオルを取り出して渡した。 「悪い、ありがとう」  そう言いながら濡れた髪をガシガシと拭いている。 「着替えとかは? そのままじゃ風邪ひいちゃうかもよ」 「あーっ、だったら体育のジャージにでも着替えようかな」 「そうだね。それがいいかも」 「サンキュ」  頭を拭きながら自分の席へ移動すると、机の横にかけられていた袋の中からジャージを取り出し、机の上に置いている。  俺は、持っていたカバンをそっと高城の机の逆サイドのフックへかけると、そのまま自分の席へと戻った。 「うわぁ、冷たっ」  聞こえてきた声に視線を移すと、ちょうど着替えるところで、学ランを脱ぎ、シャツへと手をかけているところだった。 ードキッー  大きく心臓が脈を打つ。  バスケで鍛えられた腹筋が現れて、そのまま上半身が顕になった。  思っていたよりもずっと筋肉質なその体に、思わず釘付けになる。  タオルで軽く体を拭き終えると、ジャージをすっぽりと着て、袖を肘あたりまであげていた。 「パンツは何とか免れたっぽい」 「あっ、それは良かったね」 「ノーパンでジャージは、キツイしな」 「確かに」  さすがに下のズボンをはきかえる時は、イヤフォンをして、反対側の窓へと顔を向ける。  まだ心臓が鳴り止まない。  ドキドキする胸にそっと手を当てた。 執筆時間…3:00〜4:00
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