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朝になり、眩しい光に起こされた。辺りを見回すと、透也がベッドのそばでネクタイを締めている。
「――わっ、わぁ~、ごめんなさい。すぐに朝ごはんの準備をします!」
急いで跳び起き、ベッドから立ち上がったところで、透也から手首を掴まれ制止された。
「大丈夫だ、綾芽。食事は作り置きが冷凍になっているから、温めれば食べられる」
「お仕事だとしたら、こんな遅刻許されないです。このままだと、社員として失格ですね……」
こんなに甘ったるい社員だとしたら、すぐに首にされてしまう。気落ちして、綾芽は視線を落とした。
「仕事はきちんと果たしている。昨日、充分働いてくれただろ」
「昨日!? 私は何も……」
「あれだけ興奮させておいて、何もしてないとは言わせないぞ。綾芽の声があんなに大き――」
「ひゃぁっー! 待って、待って、言わないで下さい!」
綾芽は両手を透也の口元へ伸ばし、声を荒げた。きわどい表現に、聞いていてこちらが恥ずかしくなる。透也は口を塞がれ、楽しそうにこちらを見下ろしている。
綾芽のしたことといえば、透也から丁寧に愛されて、ドロドロに溶かされて、何度も繋がって……。
思い出しているうちに昨夜経験した数々の場面が蘇り、透也の顔を見上げられなくなってしまった。
「そ、そんなことより、今夜も遅くなりますか?」
「ああ、そうだな。昨日より遅いかもしれない。でも、日曜は休みを取れるから、一緒にどこか出掛けよう」
「一緒に……?」
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