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「綾芽、ケガはないか?」
「大丈夫です。透也さんは?」
「何ともない」
柳井は屈強な男たちから床に抑え込まれ、既に抵抗を諦めていた。透也は綾芽を引き寄せると、その場で強く抱きしめる。
綾芽は今になって、体が震えてくる。足にも力が入らなくなり、透也に支えられながら部屋を出た。
隣室にある休憩所のような場所で、ソファーに座らせてもらう。透也が膝をつき、心配そうに下から覗き込んだ。
「綾芽も警察から、また事情を聞かれるかもしれない」
「はい、覚悟してます。……でも、どうして柳井さんが怪しいと思ったんです?」
「ボヤ騒ぎのあと、裏で誰か手を引く者がいると思い、調査を進めていた。こちらの動向を知り、綾芽のネックレスの存在を知り、そして触れることができる者……それが柳井だった。昨日の綾芽を呼び出した音声を聞いて、確定的になった」
「そ、そういえば……火災があった日、柳井さんからネックレスについて尋ねられて。でも……どうやって火を?」
「監視カメラを故意に破壊した人物が見つかった。足取りが掴めないよう、第三者を介して警備員を買収し、カメラを故障させている。そして火をつけた犯人は調理長の山名だった」
綾芽は驚きのあまり言葉を失う。
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