新たなる決意(透也SIDE)

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 父への強い要望の裏には、少なからず母の影響もあった。  母は最期まで父の悪口を言わなかった。言いたいことはたくさんあったはずだが、父のことを恨むような発言は最後まで耳にしていない。そんな母の様子も、透也の心に影響を与えていた。  無意識に母を傷つけたことへの憎悪が膨らみ、父の強硬なやり口を許すことができなかった。そして、この件で両親に対する想いに決着をつけたかった。  それから、すべての件が順調に進み、晴れて綾芽と透也は婚約を発表。すぐに挙式の準備を始めることとなった。 *  *  *  正式に婚約してから数週間後、透也は帰宅早々、綾芽に話があると言って、リビングのソファーに座らせた。 「もう話を通してあるが、君の父上に再び秘書の仕事を依頼しようと進めている。成沢氏には既に了承を得ているが、一応綾芽にも話しておこうと思って」 「父の気力と体力があるのなら、私は一向に構いません。でも……」  綾芽は言葉を詰まらせ、表情が曇る。 「どうした?」 「秘書ってことは……四六時中、一緒に行動するということですよね?」 「新しい人材が見つかるまでの間、ということにはなるが」  視線を合わせると、綾芽は恥ずかしそうに俯いた。何をためらっているのか分からない。肩を抱き寄せ、下から覗き込む。
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