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仕事がいくつか重なり、疲れは溜まっているが、家に帰れば綾芽の顔を見ることできる。今の心の支えは、綾芽の元へ帰り、柔らかな表情をした寝顔を見ることとだった。
「ただいま……」
静かにリビングへ向かうと、ソファーでうたた寝している綾芽を見つけた。帰宅時間が遅くなるから、先に休めと伝えてはあるが、いつもこの場所で待っている。
しかし大抵眠っていて、抱き上げるまでは目覚めることはない。綺麗な二重瞼にキュッと閉じた唇。可愛らしい寝顔と心地よさそうな彼女の吐息で、こちらまで眠りに吸い込まれそうになった。
「眠っている姿は、幼い天使のようだ。まるで昔の綾芽だな」
一緒に遊んだ幼い頃の無邪気な綾芽を思い出す。
意味も分からないまま結婚を約束し、ネックレスを嬉しそうに受け取り、庭園を駆け回っていた。その彼女がすぐ傍にいてくれるとは、今も夢のように感じる。そして、これから共に歩んでいく綾芽を大切にしなくてはと、毎晩のように誓っている。
絶対に手放したくはない。綾芽を……そして、この幸せを……。
寝ている綾芽の髪をそっと撫でる。彼女の表情が少しだけくすぐったいような表情を浮かべ、そしてまた気持ち良さそうに眠りに引き込まれていった。
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